業務統合

案件・顧客・勤怠がバラバラな会社の業務統合|CRMで収まらない部分をどうするか

業務管理が複数のツールに分散している会社向け。CRMで一本化しようとしても解決しなかった理由と、本当に全体を統合する方法を整理します。

会社の規模が大きくなると、業務を管理するツールがどんどん増えていきます。案件はこのツール、顧客はCRM、勤怠は別のSaaS、売上はExcel、現場とのやり取りはLINE。それぞれは機能していても、全体としては、情報があちこちに分散した状態になっています。

この状態を解消しようと、多くの会社がまずCRMの導入や見直しを考えます。CRMは、顧客や案件、売上を一元管理するための仕組みなので、これを入れれば業務がまとまるはずだ、と。ところが、CRMを入れても、業務管理がバラバラなままだった、という会社が少なくありません。

なぜそうなるのか。理由は、CRMがカバーできる業務と、できない業務があるからです。この記事では、業務管理が分散する仕組みと、CRMで一本化しようとしたときに何が起きるか、そして本当に全体を統合するには何が必要かを整理します。複数のツールに業務が分散していて、CRMだけでは解決しなかった、という会社向けの内容です。

なぜ業務管理は、バラバラになっていくのか

まず、なぜ業務管理が複数のツールに分散するのか。これは、会社が成長する過程で、ほぼ自然に起きることです。会社が小さいうちは、業務が立ち上がるたびに、その業務に合ったツールを個別に導入していきます。案件が増えたから案件管理ツールを入れる、顧客が増えたから顧客管理を始める、人が増えたから勤怠管理SaaSを契約する。一つひとつは、その時々の課題に対する妥当な判断です。

問題は、こうして個別に導入したツールが、互いに連携していないことです。それぞれのツールは、それぞれの業務の中では完結しています。でも、業務と業務のあいだ、ツールとツールのあいだは、つながっていない。この継ぎ目を、人が手作業で埋めることになります。案件管理の情報を見てExcelに転記する、勤怠データと売上を手で突き合わせる。この手作業が、分散のコストです。

厄介なのは、この分散が、誰かの失敗で起きたわけではないことです。一つひとつのツール導入は、その時々で正しい判断でした。だから、後から振り返っても「どこで間違えたのか」が分からない。気づいたら分散していた、というのが実態です。そして、それぞれのツールに月額を払い、それぞれの操作を現場が覚え、それぞれにデータが溜まっている。一度この状態になると、どこから手をつければいいか分からなくなり、結局そのまま使い続けることになります。こうして積み上がった月額の合計がいくらになっているかは、複数のSaaSを契約している会社へ|その月額、合計するといくらになっていますかで書きました。

CRMで一本化しようとすると、何が起きるか

業務の分散を解消する手段として、CRMはよく検討されます。CRMは、顧客を中心に、案件や商談、売上を一つにまとめる仕組みです。営業に関わる業務を統合する、という意味では、確かに有効です。ただ、ここで一つ、見落とされがちなことがあります。CRMがカバーするのは、基本的に顧客・案件・売上という、営業まわりの業務です。会社の業務は、それだけではありません。勤怠、シフト、現場の作業記録、在庫、独自の進行管理。こうした、営業まわりから外れる業務は、CRMの守備範囲の外にあることが多い。

CRMがカバーする業務と、外に残りやすい業務(製品により幅はあるが、営業まわりが中心)
CRMの守備範囲に入る業務CRMからはみ出しやすい業務
顧客情報の管理勤怠・シフトの管理
案件・商談の管理現場の作業記録・日報
売上・受注の管理在庫の管理
営業活動の履歴その会社独自の進行管理・業務フロー

すると、何が起きるか。CRMを入れて、顧客・案件・売上は一本化できた。けれど、勤怠は相変わらず別のSaaS、現場の記録は別のツール、その会社独自の業務はまたExcel。CRMでカバーできた範囲はまとまったのに、CRMからはみ出す業務は、依然としてバラバラのまま残ります。CRMを入れても業務管理がバラバラなまま、という会社は、たいていこの状態にあります。しかも、CRMでまとめた範囲と、CRMの外に残った範囲のあいだに、また新しい継ぎ目が生まれます。CRMの顧客データと、別ツールの勤怠データを突き合わせたいとき、また手作業が発生する。CRMという大きなツールを一つ増やしたことで、かえって連携の構造が複雑になることすらあります。

CRMが悪いわけではありません。CRMは、その守備範囲の中ではよく機能します。問題は、会社の業務がCRMの守備範囲に収まらないことのほうにあります。営業まわりだけで完結する会社なら、CRMで足ります。けれど、勤怠や現場業務や独自のフローを抱える会社では、CRMは「全体の一部をまとめる道具」にしかなりません。

ここで起きやすいのが、CRMに無理やり業務を載せようとして、かえって使いにくくなるパターンです。CRMからはみ出す業務を、何とかCRMの中で管理しようと、本来の用途と違う使い方をする。たとえば、勤怠の情報をCRMのメモ欄に書き込む、独自の進行管理をCRMのタグ機能で無理に再現する。こうした「無理やりの運用」は、現場に負担をかけるし、データとしても扱いにくい。CRMは営業のために作られているので、営業以外の業務を載せようとすると、どこかに歪みが出ます。結局、CRMで管理しきれない業務は、また別のツールやExcelに逃がすことになり、分散は解消されません。

業務が分散していることの、本当のコスト

CRMで収まる収まらないにかかわらず、業務管理が複数のツールに分かれていることのコストを、整理しておきます。ひとつは、二重入力です。同じ情報を、複数の場所に入力する手間です。新しい案件が決まったとき、案件管理に入れて、顧客情報を別のツールに入れて、売上見込みをExcelに入れる。一つの出来事を、何度も入力することになります。しかも、この二重入力は、入力する本人が「無駄だ」と感じながらやっていることが多い。同じことを繰り返す感覚は、現場のモチベーションを地味に削ります。面倒だからと一部の入力を省く人が出てくると、ツールによってデータが揃わなくなり、どれが正しいのか分からなくなる。二重入力は、手間だけでなく、データの信頼性そのものを損なう入り口になります。

もうひとつは、情報の突き合わせです。意思決定のために複数の情報を組み合わせたいとき、別々のツールから引っ張ってきて、手作業で照合する必要があります。この案件の進捗と、担当者の稼働状況と、売上見込みを並べて見たい。でも、案件は案件管理、稼働は勤怠SaaS、売上はExcel。一つの画面では見られない。誰かがまとめ直して、ようやく全体が見える。この作業が、週次や月次で発生し続けます。

そして、いちばん深刻なのが、全体像が見えないことです。情報が分散していると、会社全体が今どういう状態にあるのかが、誰の頭の中でも結ばれません。各ツールの中の情報は正しくても、それを統合した「今の全体像」が、どこにも存在しない。経営判断のための材料が、バラバラのまま放置されている。これは、二重入力や突き合わせの手間よりも、長期的には大きな損失です。

この「全体像が見える」かどうかは、後からじわじわ効いてきます。統合されていれば、売上の全体像がリアルタイムで把握できる、案件が滞っている兆候に手遅れになる前に気づける、担当者ごとの負荷の偏りが一目で分かる。分散していたときには「なんとなく」でしか掴めなかったことが、はっきり見える。判断のスピードと精度が変わるので、単なる効率化以上の意味を持ちます。逆に言えば、ツールがバラバラなままだと、この経営判断の質そのものが、見えないところで損なわれ続けているということです。

分散した業務管理と、統合された状態の違い(本文の整理)
場面業務管理が分散している状態統合されている状態
日々の入力同じ情報を複数のツールに二重入力する一度の入力が全体に反映される
情報の突き合わせ別々のツールから引っ張り、手作業で照合する一つの画面で並べて見られる
売上の全体像誰かがまとめ直して、ようやく見えるリアルタイムで把握できる
案件の滞留手遅れになってから気づく兆候の段階で気づける
担当者の負荷なんとなくでしか掴めない偏りが一目で分かる

本当に全体を統合するには、何が必要か

CRMでは収まらない部分まで含めて、業務全体を一本化するには、どうすればいいか。考え方としては、CRMのような既存の枠に業務を合わせるのではなく、その会社の業務に合わせて、必要な範囲を一つのシステムに統合する、という発想が要ります。案件も顧客も売上も勤怠も、そしてその会社独自の業務も、すべて同じシステムの中で扱えるようにする。そうすれば、ツール間の継ぎ目そのものが無くなります。この、枠に業務を合わせるか、業務に合わせて作るかという分かれ道については、SaaSとオーダーメイド、本当に安いのはどっちかで詳しく書いています。

ただし、ここで注意があります。すべてを一つにまとめようとしすぎると、システムが複雑になりすぎて、かえって使いにくくなります。本当に連携が必要な業務はどれか、独立していても問題ない業務はどれかを見極めて、統合すべき範囲を決めることが必要です。何でもかんでも一つにすればいいわけではありません。

もう一つ、現場の移行の問題があります。統合のために新しいシステムを導入すると、現場はこれまで使っていたツールの操作を覚え直すことになります。この負担が大きいと、統合したシステムが現場で使われず、結局また個別のツールやExcelに戻ってしまう。経営者から見れば「便利になるのだから現場も喜ぶはずだ」と思いがちですが、現場にとって、慣れたツールから新しいシステムへの移行は、純粋な負担です。どれだけ統合後のシステムが優れていても、移行のハードルが高ければ、現場は古いやり方に戻ろうとします。統合を成功させたいなら、機能の設計と同じくらい、現場がどうすれば抵抗なく移行できるかに頭を使う必要があります。

つまり、本当の統合とは、CRMのような型に業務を合わせることでも、すべてを力ずくで一つにすることでもなく、その会社の業務に合わせて、必要な範囲を、現場が無理なく移行できる形で一本化することです。統合システムを作る場合の費用の構造については、業務システム開発の費用相場と、見積もりが膨らむ仕組みで整理しています。

まとめ

業務管理が複数のツールに分散している状態は、会社の成長に伴って自然に生まれます。それをCRMで解消しようとしても、CRMの守備範囲を超える勤怠や現場業務、独自のフローは、はみ出してバラバラのまま残ります。本当に全体を一本化するには、既存の枠に業務を合わせるのではなく、その会社の業務に合わせて統合する発想が必要です。

使い勝手を保ったまま統合する、という進め方

ここで一つ、OneTraceならではの進め方を紹介します。たとえば、案件管理SaaSと勤怠管理SaaSを別々に使っている会社の場合、その2つで実際に使っている機能を、UIや操作感をほぼ変えないまま、OneTrace上に再現することができます。現場から見れば、これまでとほぼ同じ使い勝手のまま、2つのツールが一つに統合される。覚え直しの負担がほとんどありません。

その上で、これまでの2つのツールにまたがる情報の連携や、どちらのツールにもなかった機能、CRMでは収まらなかった独自業務などを、同じシステムの中で肉付けしていけます。今使っているツールの使い勝手を保ったまま統合し、足りない部分を補う。これが、フルオーダーメイドだからできる統合の形です。実際に業務に合わせて形を変えたシステムの例は、使いやすい配車システムは、会社の数だけ形が違うでも書いています。

よくある質問

Q.CRMを導入すれば、業務全体を一元管理できますか?
A.顧客・案件・商談・売上といった営業まわりの業務はまとまりますが、勤怠、シフト、現場の作業記録、在庫、独自の進行管理といった業務はCRMの守備範囲の外に残ることが多いです。自社の業務がCRMの守備範囲に収まるかどうかで、一元管理できるかが決まります。
Q.CRMからはみ出した業務は、どう管理すればいいですか?
A.メモ欄やタグ機能で無理やりCRMに載せる運用は、現場の負担とデータの扱いにくさにつながります。本当に連携が必要な範囲を見極めた上で、会社の業務に合わせた統合システムでまとめるか、独立していて問題ない業務は無理に統合しない、という切り分けが現実的です。
Q.業務統合システムの費用はどのくらいかかりますか?
A.従来の一括開発では、複数業務を連携させる中規模システムで数百万円からが相場です。近年は月額制のオーダーメイド開発が登場しており、当社のOneTraceでは月額3万円から提供しています。現在支払っている複数SaaSの月額合計と比較して判断するのがおすすめです。
Q.すべての業務を一つのシステムにまとめるべきですか?
A.いいえ。すべてをまとめようとしすぎると、システムが複雑になりすぎて、かえって使いにくくなります。本当に連携が必要な業務と、独立していても問題ない業務を見極めて、統合すべき範囲を決めることが大切です。
Q.新しいシステムに現場が移行してくれるか不安です。
A.その不安は正しいです。現場にとって慣れたツールからの移行は純粋な負担で、ハードルが高いと古いやり方に戻ってしまいます。機能の設計と同じくらい移行のしやすさの設計が重要で、今使っているツールのUIや操作感を保ったまま統合する方法も選択肢になります。

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