SaaS活用

複数のSaaSを契約している会社へ|その月額、合計するといくらになっていますか

業務ごとに別々のSaaSを契約している会社は、たくさんあります。一つひとつは月数千円から数万円なので、それほど大きな出費には感じない。でも、全部合計すると、その金額が自社専用のオーダーメイドシステムと変わらないことが珍しくありません。この記事では、複数のSaaSを使い続けることの本当のコストと、一本化という選択肢について整理します。

業務ごとに別々のSaaSを契約している会社は、たくさんあります。顧客管理はこのサービス、勤怠管理は別のサービス、案件管理はまた別、という具合に、必要が出るたびに一つずつ契約してきた。一つひとつは月数千円から数万円なので、それほど大きな出費には感じない。だから、契約したあとは、その料金を改めて見直すこともなく、なんとなく使い続けている。

ここで一度、立ち止まって計算してみてほしいことがあります。今、自社が契約しているSaaSの月額を、全部合計するといくらになるか。この合計額を正確に把握している中小企業は、意外と少ないです。そして、合計してみると、その金額が、自社専用に作るオーダーメイドのシステムと、変わらない、あるいはオーダーメイドのほうが安い、ということが珍しくありません。

この記事では、複数のSaaSを使い続けることの本当のコストと、なぜ中小企業がそれに気づきにくいのか、そして一本化という選択肢について整理します。すでに複数のSaaSを契約していて、コストと使い勝手に何となく引っかかりを感じている会社に向けた内容です。

なぜ、契約済みのSaaSのコストに気づかないのか

複数のSaaSの合計コストに気づいていない会社は、とても多いです。これは、経営者が怠慢だからではなく、構造的な理由があります。ひとつは、SaaSが少額ずつ、別々に請求されるからです。一つのサービスが月数千円から数万円。それぞれが別のタイミングで、別の名目で引き落とされる。一つひとつは小さな金額なので、痛みを感じにくい。でも、それが5つ6つと積み重なると、合計では無視できない額になっている。別々に請求されることで、合計額が意識に上らない構造になっています。

もうひとつは、中小企業には、契約を定期的に見直す仕組みがないことが多いからです。大企業であれば、翌年も同じサービスを使い続けるために、稟議を通すといった手続きがあります。その過程で「これは本当に必要か」「コストに見合っているか」が、定期的に問い直される。ところが中小企業では、こうした見直しの仕組みがないところが多い。あったとしても、新規契約のときだけで、一度契約したものは、見直されないまま自動更新で走り続ける。

そして、いちばん大きいのは、人員に余力がないことです。中小企業の現場は、常に目の前の仕事に追われています。日々の業務を回すだけで手一杯で、すでに契約しているSaaSのコストに、改めて目を向ける時間がない。コストの見直しは、緊急ではないけれど重要なこと、の典型で、こういうことは、余力がないと後回しにされ続けます。結果として、複数のSaaSが、合計額を意識されないまま、毎月静かに引き落とされ続ける。気づいたときには、相当な額を、毎月払い続けている、という状態になります。

この「見直されないコスト」は、中小企業が陥りやすい、もっと大きな構造の一部でもあります。組織が大きくなるにつれて、事務作業の量は増えていきます。契約の管理、データの集計、ツール間の情報のやり取り。こうした事務量が、人員に余力のない中小企業では、現場の負担としてのしかかる。負担に耐えきれず人が辞め、残った人の負担がさらに増え、また辞める、という悪循環に陥り、せっかく伸びていた会社が縮小してしまう。これは、中小企業の典型的なパターンのひとつです。契約済みSaaSのコストを見直せないことは、この、目の前の業務に追われて足元を見直せない、という構造と地続きなんです。だからこそ、一度立ち止まって、足元のコストと業務を見直す価値があります。

複数SaaSを使い続けることの、料金以外のコスト

合計の月額だけが問題ではありません。複数のSaaSを別々に使い続けることには、料金表に出てこないコストもあります。それぞれのSaaSが連携していないので、ログインも操作も別々です。顧客の情報を見るにはこのサービス、勤怠を確認するには別のサービス、と、業務のたびにツールを行き来する。一つの作業を完結させるのに、複数の画面を開いて、情報を突き合わせる。この手間が、日々積み重なります。

それぞれのSaaSに入りきらない情報は、結局ExcelやGoogleスプレッドシートで補うことになります。SaaSで管理しきれない周辺の情報を、別途シートで持つ。すると、SaaSとシートのあいだでも、情報が分散する。管理する場所が、SaaSの数だけでなく、その周辺にも増えていきます。

そして、複数のSaaSにまたがる情報を組み合わせて見たいとき、それができません。たとえば、勤怠のデータと、案件の売上を組み合わせて、社員一人当たりの生産性を見たい。でも、勤怠は勤怠SaaS、売上は別のサービスにあるので、一つの画面では見られない。組み合わせて初めて見える指標が、分散しているせいで、見えないままになる。つまり、複数SaaSを使い続けるコストは、月額の合計に加えて、ツールを行き来する時間、情報が分散する非効率、組み合わせれば見えるはずの指標が見えない機会損失、これらが乗っています。料金表の数字だけでは、本当のコストは見えてこないんです。

合計すると、オーダーメイドと変わらないことがある

ここで、具体的な数字で考えてみます。たとえば、顧客管理に月10万円のSaaS、勤怠管理に月5万円のSaaSを使っているとします。この2つだけで、合計月15万円です。これに、案件管理や請求管理など、他のSaaSが加われば、合計額はさらに上がります。

一方で、自社専用に業務システムを作るオーダーメイドは、高額だというイメージがあります。確かに、従来のオーダーメイド開発は、初期費用で数百万から数千万かかるのが普通でした。これと月額のSaaSを比べれば、SaaSのほうが安く見える。ところが、近年は、月額制で自社専用のシステムを作れる選択肢が出てきています。月額制であれば、初期に大きな費用をかけず、SaaSと同じように毎月の料金で、自社専用のシステムを持てる。そうなると、比較すべきは「複数SaaSの月額合計」と「オーダーメイドの月額」です。

複数SaaSの月額合計と一本化の比較(当社で実際にあった一本化の例。金額は会社の規模・要件による)
構成月額
顧客管理SaaS月10万円
勤怠管理SaaS月5万円
複数SaaSの合計月15万円
自社専用システムに一本化した場合月10万円

さきほどの例で言えば、月15万円を複数のSaaSに払っている会社が、自社専用のシステムを月10万円で持てる、ということが起こり得ます。複数のSaaSを別々に使っていたのが、一つの自社専用システムにまとまって、しかも月額のコストは下がる。「オーダーメイドは高い」という思い込みのせいで、この選択肢が検討すらされないことが多いのですが、合計額で比べると、景色が変わります。SaaSとオーダーメイドの費用構造の違いそのものは、SaaSとオーダーメイド、本当に安いのはどっちかで整理しています。

もちろん、すべての会社でこうなるわけではありません。使っているSaaSが1つか2つで、合計額が小さいなら、わざわざ一本化するメリットは小さい。でも、複数のSaaSを使っていて、合計額がそれなりになっているなら、一度、自社専用システムの月額と比べてみる価値はあります。

一本化すると、コストが下がるだけでなく、使いやすくなる

複数SaaSを自社専用のシステムに一本化すると、コストが下がる可能性があるだけでなく、使い勝手も大きく変わります。まず、ログインする場所が一つになります。これまで複数のサービスを行き来していたのが、一つのシステムにログインするだけで、すべての業務にアクセスできる。これだけでも、日々の手間はかなり減ります。

そして、これまで別々だった情報が連動することで、見えなかった指標が見えるようになります。たとえば、勤怠と業務の情報が連動すると、社員一人当たりの生産性が見えるようになる。訪問型のサービスや運送のように、業種によっては待機時間が発生し、社員をうまく配置できているかどうかで、一人当たりの売上が大きく変わります。それがリアルタイムで見えるようになると、特定のスタッフに仕事が偏っていることもすぐに分かる。負荷の偏りが見えれば、それを是正して、離職につながる過度な負担を軽減することもできます。これは、勤怠SaaSと売上のSaaSを別々に使っているだけでは、決して見えてこない指標です。

それから、これまでSaaSに入りきらずにスプレッドシートで管理していた周辺の情報も、同じシステムの中に持てるようになります。あちこちに分散していた情報が一か所にまとまり、管理がしやすくなる。自社専用に作るので、UIも自社の業務に合わせられます。SaaSは多くの会社向けに作られているので、どうしても痒いところに手が届かない部分が残りますが、自社専用なら、現場が使いやすい形に作り込める。コストが同等以下で、使い勝手はSaaSより上、ということが実現できます。

複数SaaS運用と、一本化後の違い(本文の整理)
場面複数SaaSのまま一本化した場合
日々のログイン・操作業務のたびにツールを行き来する一つのシステムですべての業務にアクセスできる
SaaSに入りきらない情報Excel・スプレッドシートで補い、さらに分散する同じシステムの中で管理できる
組み合わせて見る指標(一人当たり生産性など)別々のサービスにあり、見えないまま情報が連動し、リアルタイムで見える
UI・使い勝手汎用設計で、痒いところに手が届かない部分が残る自社の業務に合わせて作り込める

一本化と聞くと、乗り換えの手間や、今あるデータがどうなるかが不安になるかもしれません。ただ、今使っているSaaSのUIが良ければ、それに限りなく近い使い勝手に寄せて作ることもできますし、自社専用である以上、SaaSよりも細かく、使いやすいUIを実現できます。最初は不安を感じていた会社でも、完成形が見えてくると、導入が待ち遠しくなることがほとんどです。過去のデータについても、多くのSaaSはデータの出力に対応しているので、それを新しいシステムに取り込むことは可能です。今のツールの使い勝手を保ったまま統合する進め方については、案件・顧客・勤怠がバラバラな会社の業務統合で詳しく書いています。

ただし、一本化が向かない場合もある

ここまで一本化のメリットを書いてきましたが、すべての会社に勧めるわけではありません。一本化が向かないケースも、正直に書いておきます。使っているSaaSが少なく、合計額も小さい会社は、無理に一本化する必要はありません。一本化して、単にログイン画面が一つにまとまるだけで、コストも大きく変わらないなら、わざわざ作り変える意味は薄い。

一本化が効くのは、複数のSaaSを使っていて、合計コストがそれなりにあり、かつ、ツール間の連携ができないことや、組み合わせて見たい指標が見えないことに、実際の不便を感じている場合です。コストが下がる、または同等で、その上で使い勝手や見える化が大きく改善する。この条件がそろって初めて、一本化は意味を持ちます。判断の出発点は、まず自社が契約しているSaaSの月額を、全部合計してみることです。その金額を正確に把握して初めて、一本化という選択肢を検討する土俵に立てます。

複数のSaaSを契約している会社は、その合計コストに気づきにくい構造の中にいます。少額ずつ別々に請求され、見直す仕組みもなく、見直す余力もない。でも、一度合計してみると、その金額が、自社専用のオーダーメイドシステムと変わらない、ということが珍しくありません。しかも一本化すれば、コストが下がる可能性に加えて、ツールを行き来する手間が消え、これまで見えなかった指標が見えるようになります。まずは、自社のSaaSの月額を合計するところから始めてみてください。

よくある質問

Q.複数SaaSの合計月額が、いくらを超えたら見直すべきですか?
A.金額の絶対的な基準はありませんが、使っているSaaSが1つか2つで合計が小さいなら、無理に見直す必要はありません。複数のSaaSを使っていて合計がそれなりの額になっており、かつツール間の連携ができない不便を実際に感じているなら、見直す価値があります。まずは全部の月額を合計して、金額を正確に把握することが出発点です。
Q.一本化すると、月額はどのくらいになりますか?
A.会社の規模と要件によりますが、実例として、顧客管理と勤怠管理で月15万円を複数のSaaSに払っていた会社が、自社専用システムへの一本化で月10万円になったケースがあります。当社のOneTraceでは月3万円からの水準で提供しており、複数SaaSの合計額より安くなることは珍しくありません。
Q.今使っているSaaSのデータは、新しいシステムに引き継げますか?
A.多くのSaaSはデータの出力(エクスポート)に対応しているので、それを新しいシステムに取り込むことは可能です。過去のデータを捨てて移行する必要はありません。
Q.現場が乗り換えに抵抗しませんか?
A.今使っているSaaSのUIが良ければ、それに限りなく近い使い勝手に寄せて作ることができるため、覚え直しの負担は抑えられます。最初は不安を感じていた会社でも、完成形が見えてくると導入が待ち遠しくなることがほとんどです。
Q.どのSaaSを残して、どれをやめるべきか分かりません。
A.サービス単位で残す・やめるを決めるのではなく、今使っているSaaSのどの機能が本当に必要かを一つずつ見極めるのが正しい順番です。機能の棚卸しをすると、実際に使っているのは各SaaSの一部だけ、ということがよく分かります。その必要な機能だけを一つのシステムに再現するのが、一本化の設計です。

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