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工事管理システムが自社に合わないと感じる理由|既製品で収まらない部分をどうするか
工事管理システムを導入しても「自社に合わない」と感じるのは、製品の出来が悪いからではありません。工事会社の業務が会社ごとにバラバラで、既製の標準型に収まらないからです。現場作業会社では特に、原価管理や積算などがカバーしきれません。

工事管理システムを導入したのに、現場でしっくりこない。使ってはいるけれど、痒いところに手が届かない。結局、肝心なところはExcelや手作業で補っている。こういう声を、工事会社の現場でよく聞きます。
工事管理システムは年々充実していて、選択肢もかなり増えました。それでも「自社に合わない」と感じる会社が後を絶たないのは、製品の出来が悪いからではありません。工事会社の業務が、会社ごとにあまりにも違うからです。この記事では、なぜ既製の工事管理システムが合わないと感じるのか、その構造を解きほぐした上で、既製品で収まらない部分をどうすればいいかを整理します。
工事管理システムを入れても、現場に合わないと感じる
工事管理システムを導入した会社が抱える不満は、たいてい「機能が足りない」という単純な話ではありません。むしろ、機能はたくさんある。あるけれど、自社の業務の流れと、システムが想定している流れが、微妙にズレている。この微妙なズレが、日々の使いにくさになります。
たとえば、現場ごとの収支をリアルタイムで見たいのに、既製のシステムではそれができず、結局月末にならないと利益が見えない。工程表のカレンダーが、自社の工事の進め方に合っていなくて、絶妙に使いづらい。こうした「あと一歩、自社に寄せてくれれば」という不満が積み重なっていきます。
機能が無いわけではなく、自社にぴったり合っていない。この感覚が、「工事管理システムが合わない」の正体です。そして、これは特定の製品を別の製品に乗り換えても、多くの場合、解決しません。なぜなら、既製品である以上、どの製品も「多くの工事会社に共通する標準的な業務」を想定して作られているからです。問題は、その標準から、自社の業務がどれだけはみ出しているか、にあります。
工事会社は、会社ごとに業務がここまで違う
工事会社の業務が、会社ごとにどれだけ違うか。実際に複数の工事会社を見てくると、共通点を探すより、違いの多さに驚きます。
工事の期間ひとつとっても、単日で完結する工事をこなす会社もあれば、数ヶ月にわたって一つの工事を進める会社もあります。1日に複数の現場を同時に施工する会社もあれば、1日1案件にじっくり取り組む会社もある。この違いだけで、工程表やカレンダーの「ベストな見え方」は、まったく変わります。単日・複数案件の会社に最適なカレンダーと、長期・単一案件の会社に最適なカレンダーは、別物です。既製品はどこかに標準を置いて作るので、自社の工事スタイルとその標準がズレていると、カレンダーが使いづらく感じます。
管理すべき項目も、会社によってばらばらです。特別な車両が必要な会社なら、工事に紐づけてその車両を管理する必要があります。特定の機材を多く扱う会社なら、機材の管理が業務の中心になります。こうした「自社特有の管理項目」は、汎用の工事管理システムには用意されていないことが多い。
さらに言えば、同じ電気工事会社でも、一般住宅向け、ビルや商業施設向け、工場やプラントの設備向け、鉄道などのインフラ向け、送電や配電の設備向けでは、やる内容がまったく違います。ほとんど別業種と言っていいくらい、扱う対象も、必要な管理も、現場の進め方も異なる。「電気工事会社向け」と一括りにしたシステムが、すべての電気工事会社にフィットすることは、まずありません。
| 業務の違いの例 | システムの使いやすさに効いてくること |
|---|---|
| 単日で完結する工事か、数ヶ月にわたる工事か | 工程表・カレンダーのベストな見え方が別物になる |
| 1日に複数現場を同時に施工するか、1日1案件か | 同じく、工程表の最適な形が変わる |
| 特別な車両や機材を使うか | 工事に紐づけて管理すべき項目が変わる |
| 同じ電気工事でも、住宅・ビル・プラント・インフラ・送配電のどれか | ほとんど別業種と言えるほど、必要な管理と現場の進め方が違う |
工事会社の業務には、これといった共通の型がない。むしろ、会社ごとにバラバラであることが、この業界の特徴です。だから、一つの標準で作られた既製品が、多くの会社で「あと一歩合わない」となるのは、構造的に避けられないことなんです。
「施工管理」向けは充実しても、「現場作業会社」は難しい
ここで、工事管理システムを考えるときに、見落とされがちな区別があります。施工管理と、現場作業は、別物だということです。
施工管理は、工事全体の工程計画を立て、進捗を監視し、関係者間で図面や写真を共有し、納期を守るために全体を統括する仕事です。元請けや現場監督が担う領域と言ってもいい。市場に出回っている工事管理システムの多くは、この施工管理の領域に向けて作られていて、工程共有、図面管理、写真管理、現場と事務所の情報連携といった機能が充実しています。施工管理向けのシステムは、選択肢も豊富で、かなり成熟してきています。
一方で、現場作業会社、つまり実際に手を動かす専門工事会社の業務は、施工管理とは違う論理で動いています。日々の作業の段取り、職人や人員の手配、自社特有の機材や車両の管理、そして何より、案件ごとの原価管理と積算。こうした領域は、施工管理向けのシステムの守備範囲から外れがちです。
| 施工管理 | 現場作業会社 | |
|---|---|---|
| 担う仕事 | 工程計画、進捗の監視、図面・写真の共有、全体の統括(元請け・現場監督の領域) | 日々の作業の段取り、職人や人員の手配、機材・車両の管理、案件ごとの原価管理と積算 |
| 既製システムの現状 | 選択肢が豊富で、かなり成熟している | ぴったり合うものが、なかなか見つかりにくい |
| その理由 | 業界全体で、業務がある程度標準化されている | 会社ごとに業務がバラバラで、汎用の型に落とし込みにくい |
施工管理向けのシステムが充実してきた一方で、現場作業会社にぴったり合うシステムは、なかなか見つかりにくいのが実情です。理由は前の章と同じで、現場作業会社の業務こそ、会社ごとにバラバラだからです。施工管理は、業界全体である程度標準化されているので、既製品が作りやすい。でも現場作業は、扱う工事の種類や、会社の規模、仕事の進め方によって、必要な管理がまったく変わる。だから、汎用の型に落とし込みにくい。
自社が「工事管理システムが合わない」と感じているとき、その自社が施工管理側なのか、現場作業側なのかを見極めると、原因がはっきりすることがあります。現場作業側なら、そもそも既製品で完全にフィットするものを探すこと自体が、難しい挑戦だということです。
既製品が合わないと、何が見えなくなるか
工事管理システムが自社に合わないことの本当の問題は、使い勝手の悪さだけではありません。経営に必要な数字が見えなくなることです。
実際にあったケースを紹介します。ある工事会社は、工事会社向けのSaaSを使っていましたが、現場ごとの収支をリアルタイムで把握できませんでした。工程表のカレンダーも、自社の工事の進め方に微妙に合っていない。使えてはいるけれど、肝心の「今、どの現場がどれだけ儲かっているのか」が、すぐには見えない状態でした。
業務に合わせて作り直したシステムを導入して、案件ごとの利益率がリアルタイムで見えるようになったところ、案件によって利益率に大きな差があることが判明しました。原因は、見積もりの精度の低さと、案件の特性によって利益率が構造的に異なることでした。これが見えたことで、その会社は、利益率の高い特性を持つ案件の獲得に力を注ぐ、という動きができるようになりました。見えていなかったから打てなかった手が、見えたことで打てるようになったわけです。
もう一つのケースは、もっと深刻でした。年商5億円規模の工事会社が、Excelと紙で管理を続けていました。その結果、請求漏れが起きていたり、外注先から消費税を二重に上乗せして請求されていたり、といったことが起きていて、単月で200万円もの無駄が発生していました。さらに、売上が1.5億円も伸びたのに、赤字に転落してしまい、その原因が分からないと経営者が頭を抱えていました。
この会社では、案件ごとの粗利を見える化し、積算の段階と工事後の実際の経費の差異が見えるようにしました。すると、どこで利益が漏れているのかが、はっきり分かるようになりました。Excelと紙のままでは、どんぶり勘定で全体しか見えず、個々の案件のどこで損が出ているのかが分からなかった。それが、案件単位で見えるようになったことで、原因を特定できるようになったわけです。Excelや紙の管理が限界を迎えるサインについては、Excel管理が限界になる会社の特徴で詳しく書いています。
既製品が合わない、あるいはそもそもシステム化していないと、こうやって経営に必要な数字が見えなくなります。そして、見えないものは、改善できません。
業務に合わせて作ると、何が変わるか
既製品で収まらない部分は、業務に合わせて作ることで埋められます。ただ、これは単に「機能を足す」という話ではありません。
さきほどの年商5億円の会社では、もう一つ大きな変化がありました。その会社では、積算から見積もりまでを行えるのが社長だけでした。長年の経験で培った、原価を積み上げて受注金額を決めるまでのノウハウが、社長の頭の中にだけあって、他の人には再現できない。これは多くの工事会社が抱える、属人化の問題です。
このケースでは、社長の頭の中を整理するところから伴走しました。社長が無意識にやっている積算と見積もりの判断を、一つずつ言葉にして、ロジックとして整理する。そして、そのロジックをシステムに組み込みました。その結果、これまで社長しかできなかった積算から見積もりまでを、現場責任者もできるようになりました。社長の経験が、システムを通じて、組織の能力に変わったわけです。
これは、既製の工事管理システムでは絶対にできないことです。なぜなら、その会社の社長の積算ノウハウは、その会社にしかない独自のものだからです。汎用のシステムに、特定の会社の社長の頭の中は入っていません。業務に合わせて作るというのは、こうした、その会社にしかない価値を、システムとして形にすることでもあります。
業務に合わせて作ると変わるのは、使い勝手だけではありません。見えなかった数字が見えるようになり、属人化していたノウハウが組織に広がり、経営の打ち手が増える。既製品の使いにくさを解消する以上の意味が、そこにはあります。
これは、工事業界に限った話ではない
ここまで工事会社の話をしてきましたが、「既製の業界向けシステムが自社に合わない」という現象は、工事業界に限ったことではありません。業務の独自性が強い業界では、どこでも起こり得ます。業界向けと銘打ったシステムが、その業界のすべての会社にフィットすることは、まずないからです。
ただし、すべての業界がそうだというわけではありません。業務が標準化されている業界では、既製のシステムやSaaSで十分に足りることもあります。たとえば美容院は、業務がシンプルで、予約プラットフォームを起点に業務が回る構造が業界全体で標準化されているので、SaaSがよくハマります。クリニックも、医療系の法律で業務の形がかなり決まっているので、業界向けのシステムがフィットしやすい。
| タイプ | 例 | システム選びの目安 |
|---|---|---|
| 業務が標準化されている業界 | 美容院(予約プラットフォーム起点の業務構造が業界全体で標準化)、クリニック(法律で業務の形がかなり決まっている) | 既製のシステム・SaaSで足りやすい |
| 業務の独自性が強い業界・会社 | 工事会社、特に現場作業会社 | 業務に合わせて作る価値が大きい |
分かれ目は、その業界、その会社の業務が、どれだけ標準化されているか、どれだけ独自性が強いかです。標準的な業務なら既製品で足りるし、独自性が強いなら、業務に合わせて作ったほうがいい。工事会社、特に現場作業会社は、後者の典型だというだけのことです。自社がどちらなのかを見極めることが、システム選びの出発点になります。この、業務の独自性でSaaSかオーダーメイドかの答えが変わる構造は、SaaSとオーダーメイド、本当に安いのはどっちかで費用面から整理しています。
よくある質問
- Q.工事管理システムが自社に合わないのは、選び方が悪かったのですか?
- A.多くの場合、選び方の問題ではなく構造の問題です。既製品はどれも、多くの工事会社に共通する標準的な業務を想定して作られています。自社の業務がその標準からはみ出しているほど「あと一歩合わない」が残り、これは別の製品に乗り換えても解決しないことが多い。問題は製品ではなく、自社の業務の独自性がどれだけ強いかにあります。
- Q.施工管理システムと、現場作業会社向けのシステムは何が違うのですか?
- A.施工管理は工程計画・進捗監視・図面や写真の共有といった全体統括の仕事で、業界的に標準化されているため既製システムが充実しています。一方、現場作業会社の核である日々の段取り、人員手配、機材・車両の管理、案件ごとの原価管理と積算は、会社ごとにバラバラで、施工管理向けシステムの守備範囲から外れがちです。自社がどちら側かを見極めると、合わない原因がはっきりします。
- Q.既製の工事管理システムで、原価管理や積算までできますか?
- A.施工管理向けの製品では、案件ごとの原価管理や積算は守備範囲から外れがちです。特に、現場ごとの収支をリアルタイムで見る、積算段階と工事後の実際の経費の差異を突き合わせる、といった経営に直結する部分は、自社の原価の考え方に合わせた作りが必要になることが多い領域です。
- Q.Excelと紙の管理のままだと、何が問題ですか?
- A.全体のどんぶり勘定しか見えず、個々の案件のどこで損が出ているのかが分からなくなります。実例として、年商5億円規模の工事会社で、請求漏れや外注先からの消費税の二重上乗せが見過ごされ、単月で200万円の無駄が発生していたケースがあります。売上が1.5億円伸びたのに赤字に転落し、原因が分からない状態でした。案件単位で粗利が見えるようになって初めて、原因を特定できました。
- Q.業務に合わせて作ると、高くありませんか?
- A.従来の一括開発では高額でしたが、現在は月額制の選択肢があり、当社のOneTraceでは月3万円からの水準で提供しています。業務に合わせて作る価値は使い勝手だけではなく、見えなかった案件別の数字が見えるようになること、社長の頭の中にしかなかった積算ノウハウをシステムに組み込んで組織の能力に変えることなど、既製品では得られない部分にあります。
工事管理システムが自社に合わないと感じるのは、製品が悪いからではなく、工事会社の業務が会社ごとにバラバラで、既製の標準的な型に収まらないからです。特に現場作業会社では、原価管理や積算、自社特有の管理項目が、汎用の施工管理システムではカバーしきれません。既製品で収まらない部分は、業務に合わせて作ることで埋められ、それは使い勝手の改善にとどまらず、見えなかった数字や、属人化していたノウハウを、経営の力に変えることにつながります。