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シフトが複雑な会社に、既製のシフト管理ツールが合わない理由

シフト管理ツールを探しても自社に合わないと感じるのは、機能が足りないからではなく、自社のシフトが既製ツールの想定する「時間帯×必要人数」のモデルに収まらないほど複雑だからです。

シフト管理を効率化しようと、シフト管理ツールを探し始めたものの、どれもしっくりこない。比較サイトを見て、いくつか試してみても、自社のシフトの組み方には、どれも合わない。そういう経験をしている会社があります。

シフト管理ツールは、世の中にたくさんあります。機能も充実していて、多くの会社では十分に役立ちます。それでも「自社には合わない」と感じる会社があるのは、機能が足りないからではなく、その会社のシフトが、既製ツールの想定する形に収まらないほど複雑だからです。

この記事では、どういうシフトが既製ツールに合わないのか、なぜ合わないのか、そして複雑なシフトを抱える会社はどうすればいいのかを整理します。シフト管理ツールを探したけれど、自社の複雑さに合うものが見つからない、という会社に向けた内容です。

既製のシフト管理ツールが想定している「シフト」

まず、既製のシフト管理ツールが、どういうシフトを前提に作られているかを見ておきます。

多くのシフト管理ツールは、「ある時間帯に、何人を配置する」という考え方を基本にしています。たとえば飲食店なら、昼のピークに何人、夜に何人、という形で、時間帯ごとに必要な人数を決めて、そこに従業員を割り当てる。従業員から希望を集めて、必要人数を満たすように調整し、シフト表を作る。この「時間帯×必要人数」というモデルが、シフト管理ツールの基本的な発想です。

このモデルは、シフトの構造がシンプルな業種では、とてもうまく機能します。必要なのは人数の充足で、誰が入っても業務が回るなら、ツールは効率的にシフトを組んでくれる。希望の収集も、調整も、共有も、自動化できる。紙やExcelで手作業でやっていたシフト作成が、大幅に楽になる。多くの会社にとって、シフト管理ツールが便利なのは間違いありません。

実際、シフト管理ツールの比較サイトを見ると、たくさんの製品が並んでいて、機能も年々充実しています。自動作成、希望収集、スマホ通知、勤怠連携。これらは、シフトの基本構造がシンプルな会社には、十分すぎるほどの機能です。だからこそ、自社に合わないと感じたとき、「もっと良いツールがあるはずだ」と探し続けてしまう。でも、問題はツールの優劣ではなく、自社のシフトの構造が、これらのツールが前提とするモデルから外れている、という点にあることが多いのです。

問題は、シフトの構造が「時間帯×必要人数」では表現しきれない会社です。こういう会社では、既製ツールの基本モデルそのものが、自社の現実と噛み合わない。次に、どういう複雑さが、既製ツールに収まらないのかを具体的に見ていきます。

既製ツールに収まらない、シフトの複雑さ

シフトが複雑になる要因には、いくつかのパターンがあります。会社によって、どのパターンが効いてくるかは様々です。

資格やスキルの制約

ひとつは、資格やスキルの制約です。誰でもいいわけではなく、特定の資格を持つ人や、特定の業務を担当できる人でなければ、その枠に入れられない場合があります。こうなると、シフトは「時間帯に何人」では足りず、「この時間帯に、この資格やスキルを持つ人が何人」という条件付きの配置になります。人数だけ合っていても、必要なスキルを持つ人がいなければ、業務は回りません。たとえば、夜勤と日勤で求められる役割が違ったり、特定の作業は決まった人しかできなかったり、といったケースです。既製ツールの中にはスキル管理に対応するものもありますが、自社特有の担当区分や、複数の条件が絞む配置までは、なかなか表現しきれないことが多い。

場所や移動をまたぐ配置

もうひとつは、場所や移動をまたぐ配置です。従業員が、複数の拠点や現場を行き来する場合があります。どの人がどの場所に対応できるかに制約があると、シフトはさらに複雑になります。立地や担当エリアの相性、移動にかかる時間や手段など、人によって対応できる範囲が変わる。シフトを組むとき、この「誰がどこに対応できるか」を考慮しないといけない。単純に時間帯へ人を割り当てるだけの既製ツールでは、この場所や移動の制約は扱えません。

需要の変動による人員の過不足と、その再配置

さらに、需要の変動による人員の過不足と、その再配置です。予約や受注の状況によって、ある拠点では人が余り、別の拠点では足りない、ということが日常的に起こる業態があります。余った人を、足りない拠点へ動かして調整したい。でも、そこにも先ほどの移動手段の制約が絡む。誰を、どこへ動かせるか。この動的な再配置は、固定的なシフト表を前提とした既製ツールの想定の外にあります。

これらの複雑さは、単独で現れることもあれば、複数が絡み合うこともあります。資格の制約と、移動の制約と、需要変動による再配置が、同時に存在する会社では、シフトを組むこと自体が、高度なパズルになります。こういう会社で、既製のシフト管理ツールが「合わない」と感じるのは、当然なんです。ツールが悪いのではなく、そのツールが前提とするシフトの形と、自社のシフトの形が、根本的に違う。

そして、こうした複雑なシフトは、たいてい特定のベテランの頭の中で組まれています。誰がどの資格を持ち、誰がどこまで移動でき、どの拠点が忙しくなりそうか。こうした無数の条件を、長年の勘で組み合わせて、その人がシフトを作っている。これは属人化の典型で、その人が休んだり辞めたりすると、途端にシフトが組めなくなる。既製ツールが合わないからと手作業に頼り続けると、この属人化のリスクも抱え込むことになります。複雑なシフトほど、組める人が限られ、その人への依存が深まっていく。

なぜ、既製ツールでは対応しきれないのか

ここで、なぜ既製のシフト管理ツールが、こうした複雑さに対応しきれないのかを、構造から説明します。

既製のツールは、多くの会社で使えるように、共通する部分を抽出して作られています。シフト管理で言えば、「時間帯に必要な人数を割り当てる」という、ほとんどの会社に共通する部分です。この共通部分に絞ることで、安く、多くの会社に提供できる。これがSaaSの強みです。

ところが、シフトの複雑さは、会社ごとに違います。資格の制約がある会社、移動の制約がある会社、需要変動が激しい会社、それらが組み合わさった会社。この「会社ごとに違う複雑さ」は、共通部分ではないので、既製ツールの標準機能には入っていません。一部のツールは、特定の複雑さ(たとえば資格管理)に対応していますが、自社特有の条件の組み合わせまで、ぴったり対応するものは、まず見つからない。

そして、無理に既製ツールを使おうとすると、ツールで管理しきれない部分を、結局Excelや手作業で補うことになります。シフトの大枠はツールで作るけれど、資格や移動の調整は、別途人の頭と手作業でやる。これでは、シフト管理を効率化したくてツールを入れたのに、肝心の複雑な部分は、相変わらず人が抱えたまま。ツールの導入効果が、限定的になってしまいます。

ここには、もう一つ見落とされがちな問題があります。ツールと手作業が併存すると、情報が二か所に分かれてしまうことです。ツールの中のシフトと、手作業で調整した最終版が食い違い、どちらが正しいのか分からなくなる。現場は最終版を見たいのに、ツールには反映されていない、ということが起きる。こうなると、ツールがあることでかえって混乱が生まれ、「ツールを見ても意味がない」と現場で使われなくなっていきます。複雑なシフトを既製ツールに無理やり乗せると、効率化どころか、二重管理の手間が増えることすらあるわけです。

複雑なシフトを抱える会社の選択肢

では、シフトが複雑で、既製ツールに合わない会社は、どうすればいいか。

ひとつの答えは、自社の業務に合わせて、シフトの仕組みを作ることです。「時間帯×必要人数」という既製の枠ではなく、自社のシフトを実際に成り立たせている条件、つまり資格や担当の制約、移動手段による配置の制約、需要変動による再配置のルールを、そのままシステムに落とし込む。そうすれば、これまで人が頭の中でやっていた複雑なパズルを、システムが支援できるようになります。

業務に合わせて作ることには、既製ツールに合わせて業務を変えるのと違って、現場が無理をしなくていい、という利点があります。複雑なシフトには、たいてい理由があります。資格の制約も、移動の制約も、その業態で必要だから存在している。それを「ツールに合わないから」と簡略化すると、現場が回らなくなる。自社の複雑さをそのまま扱えるシステムなら、現場の実態に合った運用ができます。

そして、自社に合わせて作ると、シフト管理の効率化だけでなく、その先の見える化にもつながります。たとえば、シフトと実際の業務の状況を連動させれば、人員の配置が適切だったかどうかが見えてきます。どの時間帯に人が余っていたか、どの拠点で足りなかったか。それが見えれば、配置を改善できる。さらに、配置の偏りが見えるようになると、特定の人に負担が集中していないかも分かり、働く人の負荷を平準化することもできます。既製ツールでシフトを組むだけでは見えなかったものが、自社に合わせて作ることで、見えるようになる。

この見える化は、経営の判断にも効いてきます。人が余っている時間帯や拠点が分かれば、そこは過剰な人員配置だったということなので、コストの見直しにつながる。逆に、いつも足りていない拠点が分かれば、そこに手を打てる。シフトという日々の運用データが、ただの勤務表で終わらず、人員配置とコストを最適化するための材料になります。シフトを「組んで終わり」にするか、「組んだ結果から学んで改善する」サイクルに変えるか。自社に合わせて作るシステムは、後者を可能にします。

もちろん、すべての会社に、自社専用のシステムが必要なわけではありません。シフトの構造がシンプルで、既製ツールの「時間帯×必要人数」モデルで足りるなら、既製ツールを使うのが、いちばん手軽で安い。自社専用が効くのは、既製ツールでは表現しきれない複雑さがあって、その複雑さを人が手作業で補い続けている場合です。まず、自社のシフトのどこが既製ツールに収まらないのかを、はっきりさせることが、判断の出発点になります。

シフト管理ツールが自社に合わないのは、機能が足りないからではなく、自社のシフトが、既製ツールの想定する「時間帯×必要人数」という形に収まらないほど複雑だからです。資格の制約、移動手段による配置の制約、需要変動による再配置といった複雑さは、会社ごとに違うため、共通部分で作られた既製ツールには入っていません。こうした複雑さを抱える会社は、自社の業務に合わせてシフトの仕組みを作ることで、人が抱えていたパズルをシステムで支援でき、さらにその先の人員配置の見える化にもつなげられます。

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