業務統合

使いやすい配車システムは、会社の数だけ形が違う

配車システムが運送会社ごとに違う理由を解説。業態の組み合わせ、情報の量、立場による見るべき情報の違い、そして配車と経営数字の連動について、なぜ既製システムでは合わないのかを整理します。

配車システムを探し始めると、たくさんの製品が見つかります。自動配車、ルート最適化、GPSでの動態管理。機能はどれも充実していて、比較サイトには何十もの製品が並んでいます。それなのに、実際に導入してみると「自社には使いにくい」と感じる運送会社が、後を絶ちません。

理由は、配車という業務が、運送会社ごとにあまりにも違うからです。何を運ぶのか、どんな車両を使うのか、距離は長いのか短いのか。その組み合わせによって、配車で管理すべきことが、会社ごとにまったく変わる。だから、ある会社にぴったりの配車システムが、別の会社には合わない、ということが普通に起こります。使いやすい配車システムの形は、会社の数だけあると言ってもいい。この記事では、なぜ配車システムがこれほど会社ごとに違うのか、そして自社にとって使いやすい配車システムとは何かを整理します。

配車で管理すべきことは、業態の組み合わせで変わる

まず、配車という業務が、会社によってどれだけ違うかを見ておきます。

運ぶものや運び方が違えば、配車で考えるべきことは変わります。軽貨物を扱う会社と、ユニック車での作業が発生する会社では、配車の考え方がまったく違う。短距離の配送を数多くこなす会社と、長距離を走る会社でも、一台をどう動かすかの発想が変わる。残業が発生することを前提に組む会社と、そうでない会社でも、配車のルールが変わってきます。

業態の組み合わせで、配車で管理すべきことが変わる(本文の整理)
業態・条件の例配車に効いてくること
軽貨物中心か、ユニック車での作業があるか車両の装備や作業内容を管理する必要があるかどうかが変わる
短距離の配送を数多くこなすか、長距離を走るか一台をどう動かすかの発想と、拘束時間・休憩の管理の重みが変わる
残業が発生する前提で組むか、そうでないか配車のルールそのものが変わる
資格が必要な荷物があるかその資格を持つドライバーにしか割り当てられない、という制約が配車にかかる
特定の装備が必要な作業があるか対応できる車両にしか割り当てられない、という制約が配車にかかる

そして、現実の運送会社は、これらの要素が組み合わさっています。軽貨物と長距離、ユニック作業と短距離、といったように、複数の業態が一つの会社の中に混在している。この組み合わせによって、配車で何を、どこまで管理すべきかが、会社ごとに固有の形になります。ある会社では車両の特殊な装備を管理する必要があり、別の会社ではドライバーの資格や作業内容を細かく管理する必要がある。管理すべき項目が、会社によって違うんです。

既製の配車システムは、多くの運送会社に共通する部分を想定して作られています。だから、自社の業態の組み合わせが、その想定に近ければ使いやすいし、遠ければ使いにくい。これが、同じ配車システムでも、合う会社と合わない会社が生まれる、根本的な理由です。

そして、業態が違えば、配車を組むときに気をつけるべきことも変わります。ある会社では、特定の資格を持つドライバーでないと運べない荷物があり、その制約を踏まえて配車を組む必要がある。別の会社では、特定の装備がついた車両でないと対応できない作業があり、車両の割り当てに制約がかかる。長距離が多い会社なら、ドライバーの拘束時間や休憩の管理が配車に深く関わってくる。こうした制約は、業態ごとに違うのに、既製システムはすべての制約に対応しているわけではありません。自社に効いてくる制約が、既製システムで扱えなければ、その部分は結局、配車担当者が頭の中で補うことになります。

情報が多すぎても、少なすぎても使いにくい

配車システムの使いやすさを決める、もう一つの重要な要素があります。それは、扱う情報の量です。

配車の現場は、ただでさえ情報が多い。案件、車両、ドライバー、時間、場所、荷物の特性。これらが常に動いています。しかも、新しい案件が次々に入ってくるので、状況は流動的です。この多い情報を、どう見やすく整理するかが、配車システムの使いやすさを大きく左右します。

配車の難しさは、この流動性にあります。朝に組んだ配車が、昼には崩れることもある。急な依頼が入る、車両が故障する、ドライバーが体調を崩す。そのたびに、全体のバランスを取り直さなければならない。だから配車システムには、単に情報を表示するだけでなく、変化に応じて、全体をひと目で見渡せて、素早く組み替えられる見やすさが求められます。この「動く状況を、いかに見やすく捉えられるか」が、静的な管理表とは違う、配車システムならではの使いやすさの核心です。そして、何をどう見せれば見やすいかは、その会社の業務の動き方によって変わります。

ここで難しいのは、情報は多すぎても少なすぎても使いにくい、ということです。必要な情報が足りなければ、配車の判断ができない。かといって、あらゆる情報を詰め込むと、画面がごちゃごちゃして、肝心の情報が埋もれてしまう。既製のシステムは、多くの会社に対応するために、いろいろな情報を扱えるように作られていることが多い。その結果、自社には不要な項目まで表示されて、かえって見にくくなることがあります。

自社にとって使いやすい配車システムとは、その会社にとって不要な情報を削ぎ落とし、必要な情報を過不足なく揃えたものです。何が必要で何が不要かは、会社の業態によって違う。だから、この「情報の取捨選択」も、会社ごとに最適な形が変わります。汎用的に作られた既製システムでは、この取捨選択が自社に合わず、使いにくさとして残ることがあるんです。

この使いにくさは、地味に見えて、現場に深く影響します。毎日使う画面に、自社には関係のない項目がずらりと並んでいると、配車担当者は、その中から必要な情報を探す手間を、毎回強いられる。急いで配車を組みたいときに、この探す手間が、判断を遅らせる。逆に、必要な情報が一目で揃っていれば、判断は速くなる。配車は一日に何度も繰り返す業務なので、この小さな使いやすさの差が、積み重なって大きな効率の差になります。そして、現場が使いにくいと感じるシステムは、だんだん使われなくなり、結局Excelや口頭のやり取りに戻ってしまう。使いやすさは、システムが現場に定着するかどうかの、分かれ目でもあるんです。この、システムが現場で使われなくなっていく構造については、既存SaaSが現場に定着しない理由で詳しく書いています。

見るべき情報は、立場によっても違う

配車に関わる情報は、会社によって違うだけでなく、社内の立場によっても、見るべきものが変わります。ここも、使いやすさを大きく左右します。

同じ配車の情報でも、社長が見たいものと、配車担当が見たいものと、ドライバーが見たいものは、まったく違います。社長は、会社全体の稼働状況や採算といった経営的な指標を見たい。配車担当は、今日の案件をどの車両とドライバーに割り当てるか、という実務的な情報を見たい。ドライバーは、自分がいつ、どこへ、何を運ぶのか、という自分に関わる情報だけを見たい。それぞれの立場で、必要な情報も、見やすい形も違います。

同じ配車の情報でも、立場によって見るべきものが違う(本文の整理)
立場見るべき情報
社長会社全体の稼働状況や採算といった、経営的な指標
配車担当今日の案件をどの車両とドライバーに割り当てるか、という実務の情報
ドライバー自分がいつ、どこへ、何を運ぶのか、という自分に関わる情報だけ
経理請求や支払いに関わる数字
人事ドライバーの勤怠や評価に関わる情報

これを、全員が同じ画面を見る作りにすると、誰にとっても中途半端になります。社長には細かすぎ、ドライバーには情報が多すぎる。だから、立場ごとに表示する画面を変えることが、使いやすさにつながります。社長には経営指標を、配車担当には配車の実務画面を、ドライバーには自分の業務だけを。権限に応じて、その人が見るべき情報だけを表示する。

さらに、会社によっては、経理が見る画面、人事が見る画面、というように、権限の範囲がもっと細かく分かれることもあります。経理は請求や支払いに関わる数字を、人事はドライバーの勤怠や評価に関わる情報を見たい。こうした、立場ごとに最適化された画面をどう設計するかも、会社によって変わります。誰が、何を見るべきか。この設計が、その会社の組織に合っているかどうかで、システムの使いやすさは大きく変わります。

配車を、事故や評価や採算とつなげる

使いやすさとは少し別の観点になりますが、配車システムが本当に力を発揮するのは、配車の情報を、その先のさまざまな数字とつなげたときです。ここも、会社ごとに何をつなげるべきかが変わる部分です。

たとえば、事故の管理です。どの配送で事故があったのか、その損害はいくらだったのか。これを配車の情報と連動させると、単なる記録以上のことができます。事故が、そのドライバーの給与や評価に、どう反映されるのか。配送と評価が連動していれば、事故の少ない安全な運転を、評価につなげることができる。配車という日々の業務が、人事評価の仕組みと結びつくわけです。

もう一つは、生産性の把握です。ドライバー別、あるいは車両別に、売上や稼働率がどうなっているか。これをリアルタイムで見えるようにすると、誰が、どの車両が、どれだけ生産的に動いているかが分かる。稼働率の低い車両や、負荷の偏りが見えれば、配車を改善して、会社全体の生産性を上げられます。配車が、経営の数字と直結するわけです。

こうした連動を、どこまで、どういう形で作るかは、会社によって違います。事故の評価への反映を重視する会社もあれば、車両ごとの採算管理を重視する会社もある。何を配車とつなげたいかは、その会社が何を大事にしているかによって変わる。ここも、使いやすい配車システムが会社ごとに違う、理由の一つです。

そして、こうした連動は、既製の配車システムでは特に対応しにくい部分です。配車と評価をつなげる、配車と採算をつなげる、というのは、その会社の評価制度や採算の考え方を、システムに反映するということです。評価の基準も、採算の見方も、会社ごとに固有のもの。既製システムは配車という業務の共通部分は押さえていても、その先の、その会社独自の評価や採算の仕組みまでは、想定していません。だから、配車の情報を本当に経営に活かそうとすると、既製システムの枠を超えて、自社の仕組みに合わせて作る必要が出てきます。配車を単なる予定表で終わらせず、経営の数字とつなげたい会社ほど、自社に合わせて作る価値が大きくなります。配車に限らず、業務をまたいで数字をつなげる考え方は、案件・顧客・勤怠がバラバラな会社の業務統合でも書いています。

配車システムを導入したのに使いにくいと感じるのは、機能が足りないからではなく、配車という業務が、運送会社ごとにあまりにも違うからです。運ぶものや車両や距離の組み合わせで管理すべき項目が変わり、扱う情報の取捨選択も会社ごとに違い、見るべき情報は社内の立場によっても変わる。さらに、配車を事故や評価や採算とどうつなげるかも、会社によって異なります。だから、使いやすい配車システムの形は、会社の数だけあると言ってもいい。既製のシステムは共通部分を想定して作られているため、自社の固有の形から外れるほど、使いにくさが残ります。

よくある質問

Q.使いやすい配車システムは、どう選べばいいですか?
A.機能の多さや比較サイトの評価ではなく、自社の業態の組み合わせに合うかで選んでください。何を運ぶか、どんな車両か、距離はどうか、資格や装備の制約があるか。この組み合わせで配車の管理項目は会社ごとに変わるので、自社に効いてくる制約と管理項目を先に書き出し、それを扱えるかどうかを確認するのが確実です。
Q.導入した配車システムが自社に合わないのは、なぜですか?
A.既製の配車システムは、多くの運送会社に共通する部分を想定して作られているからです。自社の業態の組み合わせがその想定から遠いほど、扱えない制約や足りない管理項目が残り、その部分を配車担当者が頭の中で補うことになります。機能が足りないのではなく、想定されている業務の形と自社の形がズレている、というのが実態です。
Q.配車システムを入れたのに、現場がExcelや口頭に戻ってしまいます。
A.画面に自社には不要な項目が並び、必要な情報を探す手間が毎回発生していると、判断が遅れ、現場は次第にシステムを使わなくなります。配車は一日に何度も繰り返す業務なので、小さな使いにくさの積み重ねが定着の分かれ目になります。まず、自社の配車に本当に必要な情報と不要な情報を仕分けし、どこが合っていないのかを特定するところから始めてください。
Q.ドライバーにも配車担当と同じ画面を見せるべきですか?
A.立場ごとに画面を分けるべきです。全員が同じ画面を見る作りは、社長には細かすぎ、ドライバーには情報が多すぎて、誰にとっても中途半端になります。社長には経営指標を、配車担当には割り当ての実務画面を、ドライバーには自分の業務だけを、権限に応じて表示するのが使いやすさにつながります。
Q.自社に合わせて配車システムを作ると、高くありませんか?
A.従来の一括開発なら高額でしたが、現在は月額制の選択肢があり、当社のOneTraceでは月3万円からの水準で提供しています。特に、配車を事故・評価・車両別採算とつなげて経営に活かしたい会社ほど、既製システムでは対応しにくい領域なので、自社に合わせて作る価値が大きくなります。

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