業務改善

基幹システムは変えられない。でも自部署の業務は改善できる

全社で導入した基幹システムが自部署の業務に合わず、その前後をExcelで補っている、という部署は少なくありません。この記事では、基幹システムに手をつけずに自部署の困りごとだけを解決する考え方を整理します。

会社全体で使っている基幹システムが、自分の部署の業務には、どうも合わない。全社で導入したERPや基幹システムは、会社の標準的な業務には対応しているけれど、自部署の細かいやり方には噛み合わない。だから、システムでできない部分を、Excelで補いながら、なんとか業務を回している。こういう状況にある部署は、大企業や中堅企業の中に、たくさんあります。

かといって、全社の基幹システムを、自部署の都合で変えてもらうことは、現実的ではありません。基幹システムは会社全体で動いているもので、一部署の要望で刷新できるものではない。予算も規模も大きすぎて、部署の一存では動かせない。だから、多くの部署が「全社システムは変えられないもの」として受け入れ、その上で、合わない部分をExcelや手作業で我慢して埋めている。

でも、全社の基幹システムを変えなくても、自部署の業務を改善する方法はあります。この記事では、全社システムと自部署の業務のあいだにあるズレの正体と、基幹システムに手をつけずに、自部署の困りごとだけを解決する考え方を整理します。

なぜ、全社の基幹システムは自部署に合わないのか

全社の基幹システムが、特定の部署の業務に合わないのは、珍しいことではありません。むしろ、構造的に起こりやすいことです。

基幹システムやERPは、会社全体の業務を、統一的に管理するために導入されます。販売、購買、在庫、会計、人事といった、全社に共通する基幹業務を、一つの仕組みで回す。会社全体の情報を一元管理し、全体最適を図るのが、基幹システムの目的です。だから、その設計は、どうしても「会社全体にとっての標準」に寄ります。

ところが、実際の業務は、部署ごとに個性があります。同じ会社の中でも、ある部署には、その部署特有の業務の流れや、細かい管理の必要性がある。全社標準の基幹システムは、この部署ごとの個性までは、拾いきれません。基幹システムが悪いのではなく、全体最適を目的とするものが、個別の部署の部分最適まで面倒を見ることは、そもそも難しいんです。

しかも、基幹システムは全社で使うものである以上、特定の部署の要望だけを反映するわけにはいきません。ある部署に合わせて機能を追加すれば、他の部署にとっては不要な複雑さになる。全社で統一された運用を保つためには、個別の事情を切り捨てざるを得ない場面が出てきます。これは、基幹システムを設計する上での宿命のようなもので、どんなに優れたERPを入れても、必ずどこかの部署には「自分たちには合わない部分」が残ります。全社最適と部署最適は、しばしば両立しないんです。

結果として、その部署では、基幹システムでカバーできる部分と、できない部分が生まれます。カバーできない部分は、部署が独自にExcelや手作業で補う。基幹システムに入力する前の準備作業をExcelでやったり、基幹システムから出したデータを、部署独自の形にExcelで加工したり。全社システムの「前後」を、部署が手作業で埋める、という構図になります。

「前後をExcelで埋める」ことの負担

全社システムの前後をExcelで補うことは、その部署にとって、決して小さくない負担になっています。

まず、単純に手間がかかります。基幹システムに入れるためのデータを、Excelで整える。基幹システムから出したデータを、Excelで部署用に作り直す。この、システムとExcelのあいだを人が行き来する作業が、日々発生する。基幹システムがあるのに、その周りで手作業が消えない。

そして、Excelでの管理には、いつもの問題がついて回ります。担当者しか分からない複雑なExcelができあがり、属人化する。ファイルがあちこちに増えて、どれが最新か分からなくなる。手作業なので、入力ミスも起きる。全社の基幹システムはきちんと管理されているのに、その周りの部署独自の部分だけ、こうした危うさを抱えたまま運用されている。

さらに見落とされがちなのが、この部署独自のExcel作業は、全社のシステム部門の管理の外にある、ということです。情報システム部門が管理しているのは、全社の基幹システム。部署が業務を回すために自前で作ったExcelは、その管理の外で動いている。だから、改善の手が入らないまま、その部署の中だけで、負担が固定化していきます。誰かが「これは非効率だ」と気づいても、全社システムには手を出せないので、結局そのままになる。

この「宙に浮いた状態」は、時間が経つほど厄介になります。Excelを作り込んだ担当者が異動や退職でいなくなると、残された人は、なぜそのExcelがそういう作りなのか分からないまま、恐る恐る使い続けることになる。中身を理解している人がいないので、直すこともできず、かといって捨てることもできない。全社システムの周りに、こうした「触れないExcel」が溜まっていく。基幹システムという立派な仕組みがあるのに、その周辺で、部署ごとに属人化した手作業が、静かに積み重なっているわけです。これは、多くの大企業の部署で、実際に起きていることです。

全社システムを変えずに、自部署だけ改善する

ここで大事なのは、この問題を解決するのに、全社の基幹システムを変える必要はない、ということです。

困っているのは、あくまで自部署の、基幹システムでカバーされていない部分です。だとすれば、手を入れるべきは、その部分だけでいい。全社の基幹システムはそのまま動かし続けて、その前後で部署が手作業でやっている部分を、自部署専用の仕組みに置き換える。基幹システムには一切触れずに、部署の困りごとだけを解決する、という考え方です。

具体的には、基幹システムの前の準備作業や、後の加工作業を、Excelではなく、自部署の業務に合わせたシステムで行えるようにする。基幹システムとは別に、その部署のための小さな仕組みを用意して、部署の業務の流れにぴったり合わせる。基幹システムから出したデータを取り込んで部署用に処理したり、基幹システムに入れる前のデータを部署の仕組みで整えたり、といった形で、全社システムと共存させる。全社システムを刷新する大掛かりな話ではなく、部署の範囲で完結する、現実的な改善です。

このアプローチには、いくつかの利点があります。全社の基幹システムに手を出さないので、他部署や全社の業務に影響を与えない。基幹システムの刷新のような、大きなリスクも、長い期間も、巨額の予算もいらない。そして、自部署の業務に合わせて作るので、これまでExcelで我慢していた部分が、その部署にとって使いやすい形になる。全社最適の基幹システムでは実現できなかった、部署の部分最適を、別の仕組みで実現するわけです。

ここで鍵になるのが、基幹システムと、部署の仕組みを、どうつなぐかです。全社システムを変えないといっても、部署の仕組みが基幹システムと全く連携できなければ、データを二重に入力することになり、かえって手間が増える。だから、基幹システムから出せるデータをうまく取り込み、部署で処理した結果を基幹システムに戻せる形にしておくことが大事です。基幹システムはデータの出し入れができるようになっていることが多いので、その仕組みを使って、部署のシステムと橋渡しをする。こうすれば、全社システムには一切手を触れずに、部署の仕組みとなめらかに連携させられます。基幹システムを「変える」のではなく、基幹システムの「外側」で、それと協調する仕組みを作る、というイメージです。

部署の予算で、部署の判断で進められる

全社システムを変えずに自部署だけ改善する、というアプローチには、もう一つ、実務上の大きな利点があります。それは、部署単位で意思決定できることです。

全社の基幹システムを変えるとなると、全社的な合意や、経営レベルの決裁、大きな予算が必要になります。一部署の判断では、とても進められない。だから、部署に不満があっても、動き出せないことが多い。

一方、自部署だけの小さな仕組みなら、話が変わります。規模が小さいぶん、費用も抑えられる。部署の予算の範囲で通せる金額であれば、全社を巻き込む大きな決裁を待たずに、部署の判断で進められる。自分の部署の困りごとを、自分たちの裁量で解決できる。これは、全社システムの刷新を待つよりも、はるかに早く、現実的に、業務を改善する道です。

この「部署の予算で通せる」という点は、実際に動き出せるかどうかを、大きく左右します。どれだけ良い改善案でも、全社の大型投資として稟議を上げるとなると、経営の判断を仰ぎ、他部署との優先順位を争い、長い時間がかかる。その過程で、話が立ち消えになることも多い。でも、部署の裁量で決められる規模なら、現場が「これで困っている」と感じたときに、すぐ動ける。意思決定のスピードが、まったく違います。現場の課題を、現場の感覚が鮮明なうちに解決できる。これは、業務改善において、想像以上に大きな差になります。

もちろん、自部署の仕組みを作るときも、その部署の業務をきちんと理解して設計することが大事です。基幹システムの前後で、実際にどういう作業が発生していて、何をExcelで補っているのか。それを整理した上で、その部署の業務の流れに合わせて作る。ここを丁寧にやれば、全社システムは変えないまま、自部署の業務だけを、確実に楽にできます。

大掛かりな基幹システムの刷新は、簡単には進められません。でも、自部署の困りごとに限れば、全社システムに触れず、部署の予算と判断で、解決できる。基幹システムは変えられなくても、自部署の業務は改善できる、というのは、こういう意味です。

全社で導入した基幹システムが自部署の業務に合わず、その前後をExcelで補っている、という部署は少なくありません。基幹システムは全社の全体最適を目的とするため、部署ごとの個別の業務までは拾いきれず、そのズレを部署が手作業で埋めることになります。この負担は、全社システムを刷新しなくても解決できます。基幹システムには手を触れず、その前後で部署が補っている部分だけを、自部署の業務に合わせた仕組みに置き換えればいい。規模が小さいぶん、部署の予算と判断で進められるのも、大きな利点です。

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