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仕事への影響

営業新人の初受注、AIで「1年→5カ月」に短縮した育成改革

新入社員が独り立ちするまでにどれだけ時間がかかるかは、営業マネージャーなら誰もが頭を悩ませてきた問題です。育成の遅れは属人化と表裏一体で、担当者任せの指導では成果にバラツキが出やすくなります。AIで商談データを可視化する取り組みが、この長年の課題にどう効くのかを見ていきます。

何が起きたか

経営管理プラットフォーム「Diggle」を開発・提供するディグルが、AIを活用した営業組織の育成改革について明らかにしました。同社のVP of Salesである野村幸裕氏と、セールスイネーブルメント担当の吉岡究氏が、具体的な取り組み内容を語っています。

従来は、研修コンテンツによる基礎知識の習得後にロールプレイングテストを実施し、合格すれば商談同席を経て独り立ちという流れでしたが、テスト合格までに平均で1カ月以上かかり、初受注まで1年以上を要するケースもあったといいます。

そこで導入したのが、AIセールスアシスタント「Frictio」です。議事録の要約項目を設定できる機能を使い、数千件の商談から顧客の質問と営業の回答を抽出、生成AIで頻出順に並べて上位100件をQ&Aコンテンツにまとめました。さらに、商談のヒアリング状況を営業フレームワークに沿って数値化する「商談スコアリング」も導入しています。

この結果、ロープレテスト合格までの期間は25営業日から16営業日へと約40%短縮し、初受注までの期間も5カ月でほぼ平準化するようになったといいます。

背景・解説

セールスイネーブルメントとは、営業組織全体の再現性を高めるための取り組みを指す言葉です。個々の営業担当者の経験や勘に頼るのではなく、成果につながる知識・スキルを体系化し、誰もが一定水準で成果を出せる仕組みを作ることを目的にしています。

新入社員の育成が難しい理由の一つは、習得すべき知識の幅の広さにあります。今回の事例でも、プロダクト知識、経営管理というドメイン知識、さらに顧客の業界知識まで求められる点が挙げられていました。加えて「分かる」と「できる」の間には大きな差があり、知識をインプットしても商談の場でアウトプットできない新人が少なくなかったといいます。

これまでも商談の録画自体は行われていましたが、勉強会で一部を引用する程度にとどまっていました。AIによって商談全体を分析・体系化できるようになったことが、暗黙知を形式知に変える転機になったといえます。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

新人営業の立ち上がりに時間がかかっている会社ほど、商談データをAIで可視化する仕組みは効果が出やすくなります。例えば、フィールドセールスが15人いるSaaS企業で、新人の初受注までに平均10カ月かかっているとします。商談の議事録から頻出質問を抽出してQ&Aコンテンツ化するだけでも、担当マネージャーが1人で口頭指導する体制より学習のばらつきを抑えられます。

商談スコアリングの利点は、フィードバックが主観に頼らなくなる点です。今回の事例では、質問の有無や深さを0点・3点・5点で評価する基準を設け、部長級とその他メンバーの間で有意な点数差が確認できたといいます。営業マネージャーが1人で全メンバーの商談を聞いてフィードバックするには限界がありますが、点数という共通言語があれば、苦手分野を絞ったロールプレイングに時間を割けます。

一方で、この仕組みは「重要だが緊急度は低い」業務に分類されがちだとも指摘されていました。フィールドセールスが10人を超える組織であれば、育成専任の担当者を1人置く判断が必要になります。例えば、営業10人規模の製造業向けSaaS企業で、営業マネージャーが採用・育成・商談同行を兼務しているなら、まずは商談データの抽出だけでも専任者に任せる体制にすべきです。定量目標だけでなく、新人の成長実感を定性的にヒアリングする運用も欠かせません。

不確かな点・注意

今回紹介された数値は、ディグル1社における事例であり、業種や商材、営業組織の規模が異なれば同じ効果が出るとは限りません。特にホリゾンタルSaaSという特性上、顧客業界の知識習得に時間がかかりやすい構造だった点は割り引いて考える必要があります。

商談スコアリングについても、質問の有無だけを見ており、口調や態度、やりとりの深さといった定性的な要素は別途分析中の段階だと説明されています。数字だけを過信するとかえって評価を誤るリスクがある点は、記事内でも野村氏自身が言及していました。

また、AI活用のために専任の担当者を置くべきという考え方も、あくまで同社の経験に基づく持論であり、全ての企業に当てはまる基準として提示されたものではありません。導入を検討する際は、自社の営業組織の規模や商材の複雑さに応じて、取り入れ方を調整することが求められます。

出典

  1. 初受注まで「1年→5カ月」に短縮 AIで実現する営業の育成改革とは?

AI Topica 編集部