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中国系攻撃者がAIエージェントで数百組織に侵入、毎分2900回のログイン試行をMicrosoftが報告

AIに不正アクセスを任せる攻撃者が、人手では不可能な速度で企業の守りを突破し始めています。中国政府と関係するとされる攻撃グループがAIエージェントを使い、世界中の数百組織に侵入していたとMicrosoftが報告しました。セキュリティ担当が1人しかいない会社も、他人事ではいられない内容です。

何が起きたか

Microsoftの発表によると、中国政府と関係があるとされるサイバー攻撃者グループ「Storm-0940」が、2026年9月からAIエージェント「ARTEX」を用いた攻撃を世界中の数百の組織に対して実行していました。標的には自動車メーカー、金融機関、政府機関、半導体メーカーなどが含まれます。

Storm-0940は2250以上の攻撃対象に対して毎分2900回のログイン試行を仕掛け、数多くの組織のインフラストラクチャーで特権アクセス権を奪取したとMicrosoftは報告しています。一連の攻撃の中には、標的にされてから3時間以内に特権アクセス権を奪取された事例も複数含まれていたといいます。

背景・解説

Storm-0940はMicrosoftが用いる攻撃者グループの識別名で、中国政府との関係が指摘されている集団です。ARTEXは今回の攻撃で使われたAIエージェントの名称で、人間の操作者に代わって認証情報の試行や侵入経路の選定といった作業を自動で繰り返すよう設計された存在とみられます。

従来、こうした大規模なログイン試行は人手による設定や監視が前提で、攻撃の規模や速度には限界がありました。AIエージェントが攻撃の実行と判断を担うことで、毎分2900回という試行回数や、侵入から特権奪取までわずか3時間という速度が成立したとみられます。標的が自動車メーカー、金融機関、政府機関、半導体メーカーと幅広い業種にまたがっている点も、人手を介さず対象を次々と切り替えられるAIエージェントならではの特徴といえます。

Microsoftはシステム管理者に向けて、少なくとも2026年10月15日以降、記録が残っていれば10月1日以降の活動を調査し、Microsoft 365の監査記録を確認するよう呼びかけています。2つの基準日を示しているのは、保存期間の長さによって確認できる範囲が組織ごとに異なるためと考えられます。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

社内の認証基盤を24時間体制で監視していない企業ほど、今回のような攻撃に気づくまでの時間が長くなります。例えば、従業員300人程度の製造業で、情シス担当者が2人体制で夜間・休日のログイン監視をしていない会社なら、3時間以内に特権アクセスを奪われても発覚は翌営業日です。

毎分2900回という試行回数は、人手による不正アクセス検知の仕組みでは追いつきません。ログイン失敗やアクセス元の異常を自動で検知し、しきい値を超えたら即座にアカウントをロックする仕組みが、取引先が2000社を超える中堅企業でも最低限必要です。

Microsoft 365を使う会社は、監査記録の保存期間を見直すべきです。例えば保存期間が90日に設定されている会社なら10月1日以降のログを確認できますが、短い設定のままでは過去の侵入痕跡を追えません。設定を確認するだけなら情シス担当者1人でも1時間程度で済む作業です。

特権アカウントを持つ人数が10人を超える組織では、多要素認証の適用範囲とパスワード変更の頻度を今回の件を機に点検するだけで十分です。自動車・金融・半導体といった業種が名指しされた以上、同業種の取引先を持つ企業はサプライチェーン全体の認証状況を把握しておくべきです。

不確かな点・注意

Microsoftの発表では、ARTEXがどのような技術で構成され、AIがどこまで自律的に攻撃判断を下したのかという詳細は明らかにされていません。攻撃を受けた具体的な組織名や被害額、情報漏えいの有無についても公表されていません。

2250以上という攻撃対象の数や毎分2900回という試行回数はMicrosoftの調査に基づく数字であり、実際の被害範囲とは別の指標です。また、Microsoftが推奨する調査対象期間(10月15日以降、記録があれば10月1日以降)は今回確認された攻撃キャンペーンに基づく目安であり、他の攻撃者による別の手口には当てはまらない場合があります。

出典

  1. 中国政府と関係するサイバー攻撃者が世界中の数百の組織に対してAIエージェント「ARTEX」を用いて攻撃を実施していたことがMicrosoftの調査で判明

AI Topica 編集部