AI Topica

仕事への影響

製造現場の「作業分析」担当者、音声認識AIで仕事量が1/10以下に

熟練技能者が作業中に何を見て、何を判断しているか。その「暗黙知」を記録に残す作業分析は、担当者にとって時間のかかる仕事でした。音声認識と生成AIを組み合わせた新システムは、この業務にどんな変化をもたらすでしょうか。

何が起きたか

シーイーシーは、AGCと共同で音声認識を活用したデータ収集システム『SmartLogger Voice(スマートロガーボイス)』を開発しました。作業者が作業をしながら話すだけで、作業の記録と熟練技能者の知見を収集できるシステムです。あらかじめ登録したキーワードの発話をきっかけに録音を始め、作業内容をアプリに集約し、作業分析レポートを作成します。

両社はAGCの製造現場で、このシステムが取得した音声データを生成AIで解析・整理し、作業分析レポートを自動生成する実証を行いました。その結果、熟練技能者の作業分析および技能伝承の資料化にかかる時間を、それぞれ従来の10分の1以下に短縮できることを確認したといいます。価格は個別見積もりとされています。

背景・解説

作業分析とは、現場で働く人の動作や手順を観察・記録し、改善点や標準作業を洗い出す仕事です。製造業では生産性向上や人材不足への対応として、長年重視されてきた業務になります。

シーイーシーとAGCは2016年から「SmartLogger」を共同開発し、スマートデバイスによる作業ログ記録のDX化を進めてきました。スマートグラスを使ったハンズフリー記録にも取り組んできましたが、これまで記録できていたのは主に作業時間や動作といった情報にとどまっていました。熟練技能者が作業中に何を見て、どう判断しているかという「暗黙知」は、動作の記録だけでは捉えにくく、技能伝承の課題として残っていたといいます。

今回のシステムは、作業者が自然に発する「つぶやき」を音声として記録し、生成AIによって言語化・整理することで、これまで形にしづらかった判断のポイントや注意点を資料化する狙いがあります。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

技能伝承を担当する管理職や現場リーダーにとって、今回の実証結果は仕事の進め方を見直す材料になります。作業分析と資料化にかかる時間が従来の10分の1以下になったという結果は、担当者1人が抱えていた作業の量そのものを減らせる可能性を示しています。

例えば、ガラス加工を手がける工場で、熟練技能者の技を資料化する担当者が1人しかいない会社を考えてみます。これまで1件の作業分析に数日を要していたとすれば、同じ業務を数時間規模にまで圧縮できる計算になります。担当者が複数の熟練技能者を順に回って記録を取る必要がある現場では、年間でこなせる分析件数そのものを増やせます。

この変化の中心にあるのは、「記録すること」から「言葉にすること」への転換です。これまで作業分析担当者は、ストップウォッチや動画でタイミングを測り、後から本人に聞き取りをして判断基準を言語化する作業に時間を割いていました。音声でつぶやきをそのまま拾い、生成AIが整理する仕組みがあれば、聞き取りにかけていた時間を他の業務に回せます。後継者育成の計画を立てる担当者であれば、空いた時間を若手との面談や指導に充てることができます。

対応範囲は個別相談とされていますが、収集した音声データを蓄積し、現場の疑問に答えるAIエージェントの構築も検討できるとされています。指導者が不在の時間帯でも、過去の熟練技能者の知見にアクセスできる仕組みを持つ工場であれば、夜勤シフトでの判断ミスを防ぐ効果も期待できます。技能伝承の担当部署が1人か2人という中小規模の製造現場ほど、業務負担の軽減効果は大きくなります。

不確かな点・注意

作業分析時間が「従来比1/10以下」という数値は、AGCの製造現場における実証結果であり、工程の種類や作業の複雑さによって短縮幅は変わる可能性があります。他社の工場でも同じ比率で時短できるとは、出典からは確認できません。

価格は個別見積もりとされており、導入規模や契約条件によって費用感は大きく異なるとみられます。AIエージェントの構築についても「対応範囲は利用環境や連携要件に応じて個別対応する」とされており、標準機能としてすぐに使えるものではない点に注意が必要です。

また、今回の発表はシーイーシーとAGCの共同開発に基づくものであり、他業種・他工程での導入実績や、音声認識の精度に関する具体的な数値は出典に記載がありません。導入を検討する場合は、自社の作業環境でどの程度の効果が見込めるか、個別の確認が欠かせません。

出典

  1. シーイーシーとAGC、生成AIを活用し製造現場の匠の技を次世代へ継承音声認識システム『SmartLogger Voice』を共同開発

AI Topica 編集部