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Shopifyがスマホアプリ開発をReact NativeからSwiftとKotlinへ回帰、コーディングAIの性能向上が転換点に

一つのコードでiOSとAndroid両方に対応できる開発手法は、これまでコストを抑える定番の選択でした。その前提が、コーディングAIの性能向上によって崩れつつあるとしたらどうでしょうか。Shopifyの判断は、自社のアプリ開発方針を持つ企業にとって他人事ではありません。

何が起きたか

eコマースプラットフォームのShopifyは、2026年9月10日に公開した自社ブログで、スマートフォンアプリ開発における方針転換を発表しました。同社は過去数年間、iOSとAndroid向けアプリを一つのコードで開発できるフレームワーク「React Native」に注力してきましたが、これを撤回し、かつて採用していたSwift(iOS向け)とKotlin(Android向け)によるネイティブ開発に回帰するとしています[1]。

Shopifyは2020年、それまでのSwiftとKotlinによる個別開発から、React Nativeへの一本化を決めました。当時は「同じ機能をiOSとAndroidで二重に開発する負担を減らせる」ことが理由でした。2025年1月時点でも「React Nativeに注力する」との方針を掲げていましたが、コーディングAIの性能が上がるにつれて状況が変わっていったといいます[1]。

2025年末、Shopify社内では「SwiftとKotlinで二度開発しても、コーディングAIがあれば負担はさほど大きくならないのではないか」という疑問が生まれました。実際にアプリのプロトタイプをコーディングAIで再構築したところ、片方のプラットフォームの機能をもう片方に実装する作業や、プラットフォーム間の互換性維持にかかるコストを大幅に減らせたと報告されています[1]。

これを受けてShopifyは、ネイティブアプリをゼロから再構築する方針を決定しました。すでにShopアプリはSwiftとKotlinへの移行を終えており、Shopifyアプリについても2026年中にネイティブ版をリリースする予定だとしています[1]。

背景・解説

React Nativeは、Meta(旧Facebook)が開発したスマートフォンアプリ向けのフレームワークです。一つのコードを書くだけでiOS向けとAndroid向け両方のアプリを同時に作れる点が特徴で、開発コストを抑える手段として多くの企業が採用してきました[1]。

一方でReact Nativeには、パフォーマンスの最適化やフレームワーク自体のアップデート対応に、開発チームの時間とリソースを割かれるという課題もありました。Shopifyもこうした作業に相当な労力を費やしていたものの、二つのネイティブアプリを別々に作るよりは効率的だったといいます[1]。

Shopifyは2021年から大規模言語モデル(LLM)を活用したソフトウェア開発に取り組んでおり、当初は機能実装やバグの調査・修正、コードレビューといった補助的な用途にとどまっていました。コーディングAIの性能向上とともに任せられる作業の範囲が広がり、二重開発の負担そのものを見直す発想につながったとされています[1]。

各プラットフォーム専用のネイティブアプリには、OS独自の機能やファーストパーティーツールとの連携を強化しやすく、コードとフレームワーク間の依存関係を減らせるという利点があります。Shopifyの事例は、この利点を得るコストがコーディングAIによって下がったことを示す一例です[1]。

なお同様の動きは開発者コミュニティでも話題になっており、Hacker Newsでは、OpenAIのCodexを使って一晩のうちにReact Native版アプリからAndroid・iOS双方のネイティブアプリを生成できたという投稿者の体験も紹介されています[1]。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

スマホアプリを一つのコードで両OS対応させる開発手法を選んできた企業は、判断基準を見直す必要があります。理由は明確で、Shopifyの事例が示す通り、コーディングAIの性能次第では「二重開発の負担」という前提そのものが崩れるからです。

例えば、エンジニアが5人程度の小規模なアプリ開発会社で、iOSとAndroid向けに単一のクロスプラットフォームアプリを1本だけ運用している場合を考えます。これまでは開発工数を抑えるためにReact Nativeのようなフレームワークを選ぶ判断が妥当でした。しかし、コーディングAIを使って主要機能を再実装できるなら、SwiftとKotlinによる個別のネイティブアプリを2本開発しても、追加でかかる工数は数週間程度に収まる場合があります。この差が縮まった以上、OS独自機能への対応力やアプリの起動速度を優先する選択も十分に成り立ちます。

一方、すでに数十人規模の開発チームを抱え、React Native上に大規模な資産を積み上げてきた企業にとっては、話が別です。移行には既存コードの書き換えや品質検証の工数がかかるため、性急な切り替えは避けるべきです。まずは新規アプリや小規模な機能追加からSwiftとKotlinによる再実装を確認し、工数の実際の増減を測る進め方が現実的です。

いずれにしても、開発フレームワークの選定を「AI導入前の常識」のまま据え置くのは得策ではありません。年に一度は、コーディングAIの性能を踏まえて技術選定を棚卸しする社内ルールを設けるだけで、判断の遅れを防げます。

不確かな点・注意

Shopifyが公表した内容は自社の事例であり、具体的なコスト削減率や開発期間の数値は明らかにされていません[1]。

コーディングAIによる再実装がどの程度の規模のアプリまで通用するのか、Shopify以外の企業に当てはまるかどうかも、この発表だけでは判断できません[1]。

Hacker Newsで紹介された「一晩でアプリが生成できた」という体験談は、個人の投稿による一事例であり、Shopify本体の開発プロセスを代表するものではありません[1]。

Shopifyアプリのネイティブ版については2026年中のリリース予定にとどまっており、実際の提供時期や移行の完了状況は今後の発表を待つ必要があります[1]。

出典

  1. Shopifyがスマホアプリ開発でReact NativeからSwiftとKotlinに回帰、コーディングAIの性能向上が理由

AI Topica 編集部