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仕事への影響

世田谷区DX推進担当、資料作成業務の確認作業はAIでどう変わるか

生成AIを導入しても一部の職員しか使わない、個人利用にとどまる――。こうした悩みは民間企業だけでなく自治体でも起きています。世田谷区の取り組みは、行政事務の担当者が日々の資料作成や調査業務をどう変えていけるのかを考える手がかりになります。

何が起きたか

東京都世田谷区は、生成AIツールを導入したものの職員の利用状況にばらつきがあり、初めて使う職員が戸惑う場面が多かったといいます。そこで同区は、AIエージェント機能を備えた業務効率化ツール「Genspark」を導入し、効果の検証を始めました。

検証では、他の自治体の計画や公開済みの基準・手順をGensparkに読み込ませ、必要な情報の収集や論点・仮説の整理を自業務にどこまで生かせるかを確認しました。あわせて「AIドキュメント」「AIスライド」「AI画像生成」といった機能を使い、庁内向けの説明資料やチラシ、広報物の作成にも活用しています。

同区DX推進担当課の深山翔氏によると、この取り組みを通じて「職員個人が業務で使えるか」「同じ業務で繰り返し使えるか」「担当者が変わっても課の業務として使えるか」という3つの観点を確認したといいます。結果として、約2900時間の業務時間を削減できた一方、「確認と修正の負担」が増えるという新たな課題も明らかになりました。

背景・解説

AIエージェントとは、指示を受けて情報収集や資料作成などの一連の作業を自律的にこなすAIの仕組みを指します。単に質問に答えるチャットボットとは異なり、複数の工程をまとめて処理できる点が特徴です。

世田谷区は以前から、米MicrosoftのクラウドAI基盤「Azure OpenAI Service」を使って独自のAI環境を構築し、同社の「Microsoft Copilot」も導入していました。しかし、生成AIを初めて使う職員はどのような指示を出せばよいか分からず、戸惑う声が少なくなかったといいます。

そこで同区は、専門知識や高度なAIスキルがなくても、漠然とした指示から一定レベルの成果物を作れるかどうかを確かめる目的で、Gensparkの検証に乗り出しました。深山氏は、文書作成そのものよりも、その前後にある資料の比較・整理や体裁調整に時間がかかっていたことが分かり、そこをAIで効率化できる意義は大きいと話しています。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

自治体の行政事務担当者にとって、AIエージェットの導入効果は「作業時間の削減」と「確認作業の増加」という二面で評価する必要があります。約2900時間という削減効果は大きく見えますが、同時に生まれた「確認と修正の負担」を軽視すると、現場の負荷はかえって増えてしまいます。

例えば、人口30万人規模の市で広報資料や計画書の作成を担当する職員が3人いる課を想定してみます。これまで資料の体裁調整や他自治体事例の比較に1件あたり半日かかっていた作業をAIエージェントに任せれば、作業時間そのものは大きく圧縮できます。しかし、AIが作った成果物をそのまま使えるとは限らず、内容の正確さや表現の妥当性を職員が一つひとつ確認し、必要に応じて修正する工程は残ります。この確認作業を誰がどれだけの時間をかけて担うのかを事前に決めておかないと、削減した時間の一部が確認業務に吸収されてしまいます。

重要なのは、Gensparkのようなツールを「指示が苦手な職員でも使える」設計として評価している点です。これまでMicrosoft Copilotのような既存ツールを使いこなせなかった職員層にこそ恩恵が及ぶ可能性がある一方、使いこなせる職員が増えるほど、今度は組織として成果物の品質をそろえる確認体制が必要になります。つまり、個人の作業時間削減だけを指標にするのではなく、課単位・組織単位でどれだけの確認工数が発生しているかもあわせて把握すべきです。

自治体の情報システム部門や企画担当者がこうしたツールの導入を検討する場合、削減時間の数字だけで判断するのは不十分です。確認・修正にかかる時間を含めた総工数で比較し、担当者が変わっても業務として定着するかどうかまで見極める視点が欠かせません。

不確かな点・注意

今回の約2900時間という削減効果が、どの業務・期間を対象に算出されたものかは、出典からは分かりません。全庁的な数値なのか、特定の部署・検証期間に限った数値なのかという前提情報がないため、他の自治体や企業がそのまま参考にできる数字かどうかは注意が必要です。

また「確認と修正の負担」がどの程度増えたのか、具体的な時間や人数は明らかにされていません。削減効果と負担増加のどちらが上回っているのか、差し引きでの効果は不明なままです。

Gensparkの導入費用や、Microsoft Copilotなど既存ツールとの併用状況、今後の全庁展開の計画についても、出典の範囲では詳細が示されていません。導入を検討する自治体や企業は、こうした点を踏まえたうえで、自組織の業務量や体制に合わせた追加の情報収集が求められます。

出典

  1. AI活用で約2900時間削減した世田谷区、しかし「確認と修正の負担」増加 新たな課題どう対応?

AI Topica 編集部