AI Topica

仕事への影響

営業活動の自動化をAIエージェントが支える、SCSKがFDE100名を育てる狙い

営業の現場で商談準備や顧客対応をAIエージェントに任せる動きが、ITベンダー自身の社内から始まっています。SCSKがSalesforceの「Agentforce」を導入し、専門人材を100名育てることを、セールスフォース・ジャパンが発表しました。営業部門が外部に頼らずAIエージェントを運用する体制を自前で作る試みとして、他社の営業DXにも参考になる動きです。

何が起きたか

SCSK株式会社が、SalesforceのAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」および最上位のサポートプラン「Signature Success Plan」を導入したことを、セールスフォース・ジャパンが発表しました。

あわせてSCSKは、AIエージェントの構築・展開を主導する顧客接点・販売管理領域での現場伴走型エンジニア「FDE(Forward Deployed Engineer)」を社内で100名育成する取り組みを開始します。FDEは、Agentforceや「Data 360」などの技術を使い、顧客企業の現場に入り込んで試験導入から本番稼働・定着化まで一気通貫で支援する専門職と定義されています。

今回の取り組みの狙いは、営業現場の自動化による全社的なAI活用の推進と営業プロセスの刷新です。そこで得た知見やノウハウを顧客向けビジネスへ展開し、Agentforceパートナーとしての新たな収益基盤を確立することも目指すとしています。

SCSKは過去にも、特定の事業ドメインでSales Cloudを活用したSFA導入と営業プロセス改革に取り組み、案件創出から受注までの活動を高度化した結果、売上総利益が前年同期比200%に伸びた実績があるといいます。この経験を踏まえ、AIを前提とした営業オファリングの強化が必要になったことが、今回の決定につながりました。

背景・解説

Agentforceは、人とAIエージェント、アプリケーション、データを一つのプラットフォーム上でつなぎ、企業がAIエージェントを業務に組み込めるようにするSalesforceの製品です。FDEは、今回のリリースで定義された「現場伴走型エンジニア」で、AIエージェントの試験導入から本番稼働、定着化までを一貫して支援する役割を担います。

SCSKがこの取り組みを進める背景には、「カスタマーゼロ」という考え方があります。これは、Salesforceが自社を最初のユーザーとして率先して活用し、実証した成果を顧客企業に展開する取り組みを指します。SCSKはこの考え方に基づき、まず自社の営業現場でAgentforceを実践・検証し、そこで得たノウハウを顧客企業向けのサービスに反映させる方針です。

これまでSCSKは、Sales Cloudを使った営業支援システムの導入支援を約20年にわたり手がけてきました。しかし生成AIやAIエージェント技術が急速に進展したことで、営業活動の高度化に求められる水準そのものが変わり、既存のオファリングもAIを前提に組み直す必要が出てきたといいます。Signature Success Planの採用は、専門チームの伴走支援を受けながら、Agentforceの構築・運用を社内で完結させる体制を早期に整えるための選択だったと説明されています。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

営業部門がAIエージェントの運用を外部任せにせず自前で担う体制は、今後の営業DXの標準形になります。SCSKの取り組みが示すのは、AIエージェントを導入するだけでなく、それを現場で動かし続ける人材を社内に置くという発想です。FDEという役割は、システム部門のエンジニアと営業部門の実務担当者の間に立ち、商談準備や顧客対応の自動化を主導する存在になります。

例えば、従業員300名規模の機械部品商社で営業担当が40名いる会社を考えてみます。見積作成や提案資料の準備、問い合わせ対応に営業担当1人あたり週5時間以上かかっているとすれば、AIエージェントがその一部を肩代わりすることで、週200時間分の作業時間が浮く計算になります。この時間を使って、営業企画や情シスの担当者が数名、AIエージェントの設定・調整を担うFDE的な役割を兼務する形が現実的な第一歩です。

重要なのは、FDEは単なるシステム担当者ではなく、営業プロセスそのものを理解したうえでAIエージェントの挙動を調整する役割だという点です。SCSKが100名という規模で育成に踏み切ったのは、一部の専任者だけでは全社的な営業プロセス刷新を支えきれないという判断があったためと読み取れます。中堅企業であれば100名は不要でも、営業部門の規模に応じて数名から十数名のFDE的人材を育てる発想は十分に参考になります。

営業責任者やIT部門の責任者は、AIエージェント導入を「ツールの選定」で終わらせず、「誰が運用し続けるか」という人材配置の課題として捉え直すべきです。導入後の定着化を担う人材を社内に置けるかどうかが、投資対効果を左右します。

不確かな点・注意

FDE100名という規模が、営業部門全体に対してどの程度の比率になるのかは、今回の発表だけでは分かりません。育成期間や具体的な研修内容、配属先の部署構成についても明らかにされていません。

売上総利益が前年同期比200%に伸びたという実績は、過去のSales Cloud導入・SFA改革によるもので、今回のAgentforce導入後の成果ではない点に注意が必要です。今回の取り組みの効果が数値として公表されるのは、これからになります。

また、SCSKの事例は自社が「カスタマーゼロ」として実践する特殊な位置づけであり、同社がSalesforceの主要パートナーとして約20年の導入・活用ノウハウを持つ点も踏まえる必要があります。同様の体制を一般の事業会社がそのまま再現できるかどうかは、この発表だけでは判断できません。

出典

  1. SCSK、Salesforceの「Agentforce」を活用し営業AIエージェントを内製化

AI Topica 編集部