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仕事への影響

選挙事務の問い合わせ対応、札幌市はGeminiで「生き字引」不要に

衆院選の応援職員が、ベテラン職員に聞かなくてもAIに聞けば仕事を進められる。札幌市では、そんな変化が選挙事務の現場で起きています。多忙な部署の問い合わせ対応やノウハウ継承に悩む企業にとっても、参考になる事例です。

何が起きたか

札幌市は2025年5月、全庁約16,000人の職員に向けてGoogle Workspaceを導入し、生成AI「Gemini」を利用できる環境を整えました。導入から1年以上が経った2026年夏時点で、Geminiの1カ月あたりのアクティブユーザーは職員全体の8割を超えます。

同市が迎えたのは、解散から投開票までが戦後最短の16日間となった2026年2月の衆院選です。人口196万人、10の行政区を抱える同市では、選挙の専門知識を持つ担当者だけでは人手が足りず、他部署の職員が応援に駆り出されています。準備期間が短かったこの選挙では応援職員からの問い合わせが殺到しましたが、関連資料を事前に読み込ませたGemini Notebookを活用したことで、応援職員は自力で疑問を解消しながら選挙事務を進められるようになりました。担当者の負担を大きく減らすことができたと、同市デジタル戦略推進局の職員は振り返っています。

背景・解説

Gemini Notebookとは、あらかじめ指定した文書やデータをもとに、チャット形式で質問に答える生成AIの機能です。札幌市ではここに、過去の通知文書や内規、選挙事務のマニュアルなどを読み込ませ、職員が必要な情報を素早く引き出せるようにしています。

自治体の業務では、何十年も前の通知や複雑な法律・内規を確認する作業が日常的に発生します。同市システム調整課の黒澤公輝課長は、紙の資料をめくって調べ物をしていた頃を「1日、2日かけてようやく一つの調べ物をする感覚でした」と振り返っています。

こうした調べ物の負担を軽くするため、同市は2025年にGoogle Workspaceを全庁導入し、オンプレミスのファイルサーバーにあったデータをGoogleドライブへ移行しました。あわせて、インターネットから完全に切り離す「三層分離」型のセキュリティから、クラウド利用を前提にした「β’モデル」へと方針を切り替え、Chrome Enterpriseを使って端末にデータを残さない運用にしています。人口減少や少子高齢化で行政サービスの維持が課題になるなか、こうした基盤整備が生成AI活用の土台になっています。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

選挙や繁忙期に他部署から応援職員を集める業務ほど、Gemini Notebookの効果は大きくなります。応援職員は普段担当していない業務の内規を知らないまま現場に入ることが多く、従来は専任担当者への質問が集中し、担当者の対応時間が業務全体を圧迫していました。札幌市の事例では、関連資料をあらかじめNotebookに読み込ませておくことで、応援職員自身が疑問を解消できるようになり、担当者が付きっきりで説明する場面は減っています。

例えば、職員50人規模の町で衆院選の際に選挙管理委員会の担当者3人に対し応援職員が15人動員される場合を考えてみます。過去の選挙事務マニュアルや関連内規をGemini Notebookに読み込ませておけば、応援職員は担当者に逐一確認せずに疑問の大半を自己解決できます。担当者3人が本来の点検業務に充てられる時間は増え、投開票日までの残業も抑えられるはずです。

属人化の解消という観点でも効果は見逃せません。札幌市の本間航一氏によれば、財務に詳しい「生き字引」的な職員はかつて50人に1人程度しかいませんでした。関連書類をNotebookに読み込ませて部内や全庁に公開する運用に変えれば、特定の職員に調べ物が集中する状況を解消できます。これは選挙事務に限らず、契約審査や許認可のように専門知識が必要な業務全般に当てはまる話です。新人や異動直後の中堅職員にとっても、先輩に聞きづらい基礎的な質問をAIに投げられる効果は小さくありません。

専門知識に依存する部署を抱える自治体や企業は、繁忙期の応援体制を組む前に、関連文書をまとめてNotebookに読み込ませる準備をしておくべきです。ベテランが1人しかいない小規模な部署でも、通常業務の合間にマニュアルを整理してAIに読み込ませるだけで十分です。

不確かな点・注意

出典は職員へのインタビューを基にした実感が中心で、問い合わせ件数や対応時間がどれだけ減ったかという定量的なデータは示されていません。選挙事務での負担軽減も「劇的に減らすことができた」という表現にとどまり、具体的な人数や時間は明らかになっていません。

Chrome Enterprise Premiumの導入についても「進めている」段階とされるのみで、開始時期や対象範囲は不明です。人口196万人という規模の政令指定都市での事例であり、人口規模や選挙実施体制が異なる自治体で同じ効果が出るかどうかは、この記事の内容だけでは判断できません。

出典

  1. 札幌市、Gemini が「職場の生き字引」に。DX で役所が変わる

AI Topica 編集部