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仕事への影響

設計者の仕事、勘と経験からAI設計解の検証へ パナソニックの設計AI事例

シミュレーションとAIを組み合わせた「設計AI」が、製造業の現場で構造探索の主役になりつつあります。設計担当者にとっては、自らゼロから構造を思いつく仕事から、AIが出した候補を見極める仕事への切り替えが迫られる話です。

何が起きたか

製造業向けオンラインイベント「ITmedia Virtual EXPO 2026 夏」が、2026年8月25日から9月25日まで開催されました。パナソニック ホールディングス プロダクト解析センターの太田智浩氏は、基調講演で独自の「設計AI」について説明しました。

太田氏は、メンズシェーバー「ラムダッシュ」に搭載する高速リニアモーターの開発現場で直面した課題を紹介しています。ある報告会議で「リニアモーターの限界性能はどこにあるのか」と問われた際、太田氏自身が答えられなかったといいます。検討すべき設計パラメーターが増え続ける中で、自らの設計スキルだけで性能をさらに引き上げることにも限界を感じたと振り返りました。

こうした経験から、シミュレーションとAIを組み合わせた「設計AI」の開発に着手しました。設計する領域だけを設定すれば、その中でAIが性能を高められる構造をゼロベースで探索する仕組みです。ラムダッシュのリニアモーターに適用した事例では、AIが探索を重ねるうちに出力が徐々に高まり、最終的には設計者の勘や経験に基づく現行商品の設計値を上回る構造を導き出したといいます。

背景・解説

設計AIとは、シミュレーションとAI技術を組み合わせ、デバイスの構造そのものを自動で探索・生成する技術を指します。従来の設計プロセスでは、まず設計者が勘や経験を基に基本構造を決め、その後シミュレーションや実験で寸法などのパラメーターを最適化していました。最初に決めた構造が適切でなければ、パラメーターをいくら調整しても目標性能に届かず、構造そのものを設計し直す必要がありました。

これに対して設計AIは、設計者が構造の骨格を決める前段階から、AIに広い設計領域を探索させます。人には時間や経験による制約がありますが、AIは設計者が発想しにくい構造も含めて幅広く候補を検討できます。太田氏は、日本の生産年齢人口の減少や、製造業における指導者不足・育成時間の不足といった人材面の課題にも触れ、設計の自動化がこうした課題への対応策の一つになり得ると述べています。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

設計担当者の仕事は、構造を思いつくところから、AIが出した構造を検証し良し悪しを判断するところへ移ります。パナソニックの事例が示すように、AIは設計領域さえ与えれば、人が発想しにくい構造まで含めて出力を重ね、性能を引き上げていきます。設計者に求められるのは、その出力が実際の使用条件や量産工程に耐えるかどうかを見極める判断力です。

例えば、従業員50人ほどの精密部品メーカーで、モーターやアクチュエーターの設計を2人の技術者が担当している場合を考えます。これまでは若手が先輩の勘や経験を数年かけて学び、基本構造の当たりを付ける作業に多くの時間を割いてきました。設計AIのような仕組みを取り入れれば、構造探索そのものはAIに任せ、若手はシミュレーション結果の妥当性を確認する検証作業に時間を回せます。育成期間の短縮につながります。

一方で、AIが提示する構造を鵜呑みにする設計現場では、逆に品質リスクが増します。太田氏の講演でも、設計AIはあくまで「性能を高められる構造」を探索する道具であり、材料調達コストや組み立てやすさといった別の制約は別途考慮が必要だと説明されています。設計部門の管理職は、AIの出力を評価する基準やレビュー体制を先に整えるべきです。基準が曖昧なまま導入すると、検証作業自体が新たな属人化の温床になります。

不確かな点・注意

太田氏の講演で示された成果は、リニアモーターという特定のデバイスにおける社内事例であり、他の製品分野や他社の設計現場でも同様の効果が出るかどうかは講演内で明言されていません。設計AIによって導き出された構造の性能値や、開発にかかった期間・コストといった具体的な数値は公表されていないのです。設計AIの適用範囲がデバイス設計以外の領域にどこまで広がっているのかも、今回の講演だけでは判断できません。導入を検討する企業は、自社の製品特性に照らして効果を個別に確認する必要があります。

出典

  1. 限界性能はどこか? パナソニックの「設計AI」が導く勘と経験を超えた設計解

AI Topica 編集部