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パロアルト、AIエージェント普及で広がる攻撃対象領域への統制強化を提言

社内でAIエージェントの利用が広がるほど、把握できていないリスクの数も増えていきます。パロアルトネットワークスが開いたカンファレンスでは、侵入から機密データの流出までの時間がすでに1時間強にまで縮まっている実態が示され、企業に統制体制の見直しを求める提言がありました。

何が起きたか

パロアルトネットワークスは10月15日、東京都内でサイバーセキュリティカンファレンス「Ignite」を開催しました。基調講演には代表取締役会長兼社長のアリイヒロシ氏、米Palo Alto Networksプレジデントのビージェイ・ジェンキンス氏らが登壇しています。

アリイ氏は、生成AIの利用が「AIプロンプト」から自律的に判断して行動する「自律型エージェント」へ急速に移行している現状を指摘しました。企業の生産性向上を後押しする一方で、広範囲にわたるAI利用によって攻撃対象領域が劇的に広がっていると述べています。その上で、セキュリティリーダーが取り組むべき優先事項として「AIでAIを制する」ことと「Secure AI by Design」の徹底という2つの戦略を挙げました。

続いて登壇したジェンキンス氏は、攻撃者がシステムへ侵入してから機密データを外部へ持ち出すまでの最短時間が、1年前の4.8時間からわずか1.2時間にまで短縮されたと明らかにしました。共通脆弱性識別子(CVE)が公表されてから攻撃者が標的へのスキャンを開始するまでの時間も、わずか15分にすぎないといいます。同社が顧客向けに提供を始めた新サービスの初期検証では、テストを実施した100社以上の全てで未知のセキュリティ上の露出リスクが見つかり、そのうち37%は深刻度が「重大」または「高」に分類されました。

こうした状況を踏まえ、ジェンキンス氏は企業が整えるべき体制として「可視化」「アクセス管理」「Runtime AI Security」の3つの要件を示しています。

背景・解説

アタックサーフェス(攻撃対象領域)とは、攻撃者が侵入やデータ窃取の糸口にしうるシステムやサービスの範囲を指す言葉です。従来は人が操作するアプリやネットワーク機器が中心でしたが、人の指示なしに判断・行動する自律型エージェントが業務に組み込まれることで、監視すべき対象が一気に広がっています。

パロアルトによると、日本国内では2026年に入ってからのデータ侵害件数がすでに500件を超え、過去2年間の件数を上回るペースで推移しているといいます。攻撃者側も高度なAIモデルを使い、複数の低リスクな脆弱性を組み合わせて重大な攻撃に仕立てる手法を広げており、攻撃サイクルの短縮が背景にあります。

一方で同社は、先端の生成AIモデル(フロンティアAI)が防御側の武器にもなると説明しました。通常2年以上かかるとされる擬似攻撃による侵入テストを3週間のスキャンで終えられたほか、モデル自身による脆弱性攻撃コードの作成成功率は72%に達したとのことです。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

AIエージェントを業務に取り入れる企業は、導入と同時に監視の仕組みを用意する必要があります。例えば、従業員300人規模の製造業で営業部門が独自に受発注管理用のAIエージェントを導入している会社なら、情報システム部門がそのエージェントの稼働状況や接続先を把握できているかをまず確認すべきです。侵入からデータ流出までの時間が1.2時間まで縮んでいる以上、事後対応だけに頼る体制では被害を止めきれません。

講演で示された「可視化」「アクセス管理」「Runtime AI Security」という3つの要件は、専門組織がなくても着手できる範囲から始められます。例えば、経理担当が5人の中堅企業であれば、社内でどのAIツールを誰が使っているかを一覧表にまとめるだけでも、未把握のリスクを洗い出す第一歩になります。すべての部署に高度な監視基盤を一度に導入する必要はありません。まずは自社が使っているAIエージェントの数と用途を棚卸しすることが優先です。

セキュリティ対策とAI活用の推進は、どちらか一方を優先する話ではありません。マーケティング部門が生成AIで広告文を量産している会社でも、財務部門がAIで経費処理を自動化している会社でも、導入の企画段階からセキュリティ担当者を同席させる進め方に変えるべきです。後付けの対策で穴を塞ごうとすると、修正コストも時間もかさみます。

不確かな点・注意

記事で示された侵入から流出までの時間(1.2時間)、ペネトレーションテストの期間(3週間)、脆弱性攻撃コードの作成成功率(72%)は、いずれもパロアルトネットワークス自身の調査や検証に基づく数値です。第三者機関による独立した検証結果ではない点には注意が必要です。

日本国内のデータ侵害件数が2026年に500件を超えたとする情報についても、集計方法や対象範囲の詳細は明らかにされていません。新サービス「Unit 42 Frontier AI Defense」の初期検証で確認された「100社以上」という対象企業の業種や規模も公表されておらず、自社の状況にそのまま当てはまるとは限らない点を踏まえて数値を読む必要があります。

出典

  1. AIエージェント普及で広がる攻撃面--パロアルトが説く、企業が向き合うべきAIリスクと統制の要諦

AI Topica 編集部