海外工場への指示書作成、通訳からGeminiへ ニチエツが選んだ翻訳の切り替え
海外の生産拠点に送る技術指示書は、誰が訳せば現場に正しく伝わるのでしょうか。ベトナムに工場を持つ産業機械メーカーのニチエツは、その答えを通訳ではなく生成AIに見いだしています。指示書の精度と速度がどう変わったのか、経営者のインタビューから読み解きます。
この記事の要点
何が起きたか
横浜市の産業機械メーカー、ニチエツがベトナムの現地法人に送る製品の指示書を、生成AIで翻訳するようになったといいます。同社の中村高志社長は「かつては指示書の翻訳が誤解され、生産性が下がっていました。AIを活用して改善を進めています」と話しています。
同社によると、これまでベトナム語に堪能な通訳に翻訳を依頼しても、技術的な知識が不足していたり、通訳者自身の解釈が入り込んだりすることで、正確に伝わらない場面があったといいます。実際に、翻訳の誤解からベトナム工場が間違った内容の製品を製造しかけたり、意思疎通が遅くなったりしたこともあったとのことです。
現在はオフィススイート「Google Workspace」上で利用できる有料版のGeminiを活用しています。日本語で設計意図や細かな技術的ニュアンス、数式を入力し、技術用語に特化したベトナム語の指示書を出力させることで、現地のエンジニアが直感的に理解できるドキュメントを迅速に共有できるようになったといいます。指示書の作成だけでなく、開発の試行錯誤で行き詰まった際の「新たな制御アイデアの壁打ち」にも使っているとのことです。
背景・解説
ニチエツは2017年11月に横浜市で創業した産業機械メーカーです。プラスチック成型機やプレス機の金型を自動・半自動で搬送・着脱する「金型交換装置」や、搬送ロボットを開発・生産しており、供給先は自動車や自動車部品、電機メーカー、医療関係に及びます。独自の高密度設計により、装置が専有する床面積を従来品より30~50%小さくした点や、ローラーが衝撃を逃がす構造で耐久性を高めた点を強みとしています。
中村社長はキヤノンのエンジニア時代、12~17年にベトナムの現地法人で勤務し、優秀な人材が多いことを実感したといいます。この経験を踏まえて起業時からベトナム生産を構想し、19年にハノイに現地法人を設立、25年にはハノイ近郊のバクニン市の工場を稼働させました。
同社が扱う指示書は、どんな仕様にするのか、どの箇所に注意すべきかといった細かいニュアンスまで正確に表現する必要がある、高度な技術文書です。こうした文書の精度が生産の正確性や速度を左右するため、翻訳の質そのものが経営課題になっていたことがうかがえます。
仕事や業務への影響
海外に生産拠点や協力工場を持つ製造業ほど、技術文書の翻訳を通訳頼みから生成AI活用へ切り替える価値があります。通訳者の技術知識や解釈の幅に依存する体制は、専門用語が多い指示書ほど誤差が生まれやすく、ニチエツの事例が示すように「違う製品を作りかけた」という実害につながりかねません。
例えば、従業員80人規模の金属部品メーカーがタイの協力工場に毎月十数件の仕様変更を伝えている場合を考えてみます。これまで通訳を介して専門用語を確認するのに数日かかっていた工程を、日本語の設計意図をそのまま生成AIに入力して現地語の指示書を作る方式に変えれば、やり取りは数時間単位に縮まります。設計担当者が自分の手で技術ニュアンスを言語化できるようになる点も見逃せません。従来は通訳者を介して間接的に伝えていた内容を、担当者自身が直接コントロールできるようになるからです。
一方で、Geminiのような生成AIは、既に明確になっている設計意図を正確な言葉に変換する作業には向いていますが、現場の物理現象を捉える役割までは担えません。ニチエツの中村社長自身、搬送ロボットの開発では実機の振動や発熱、工場の床面の状態を直接確かめながら議論することが欠かせないと述べています。つまり、技術文書の翻訳はAIに任せつつ、実機を囲んだ議論は対面で続けるという役割分担が、海外拠点とのものづくりでは現実的な落としどころになります。設計部門や品質保証部門が指示書作成にかける時間を減らせれば、その分を現地での実機確認や人材育成に回すことも可能です。
不確かな点・注意
今回の内容は、ニチエツの中村社長へのインタビューに基づくものです。誤訳によって生じていた生産性低下の具体的な度合いや、Gemini導入によるコスト削減額、作業時間の短縮幅といった定量的な数字は示されていません。
また、トラブル対応システムの海外展開は、記事時点ではまだベトナムなどで実用化されておらず、今後の方針として語られている段階です。搬送ロボットの開発など物理現象を伴う領域では、中村社長自身が対面での議論や実機確認の重要性を強調しており、翻訳業務の効率化がそのまま海外拠点とのものづくり全体の効率化を意味するわけではない点には注意が必要です。
出典
この記事のつくり方
国内外の情報源(企業の公式発表や、国内外の報道)を巡回して、新しいニュースの候補を集めます。
AIが、選んだ出典だけをもとに記事を書きます。出典に無い数字・日付・発言は作りません。
20を超える決まりの検査と、別のAIによる出典との照らし合わせを通った記事だけを公開します。通らなかった記事は公開しません。
公開した記事には、運営者が目を通しています。誤りに気づいたときは、訂正するか、公開を取り下げます。