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AI推論シフトで電力争奪 レノボが語る水冷技術と最大40%削減
AIの利用が「学習」から「推論」に移るにつれ、企業が向き合うのはモデル選びだけでなく、データをどこに置き、どう電力をまかなうかという設備の問題になります。レノボ・エンタープライズ・ソリューションズのトップが語った内容は、自社でサーバーを持たない企業にも無関係ではありません。
何が起きたか
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの代表取締役社長、張磊氏がZDNET Japanのインタビューで、AI推論時代のデータセンター戦略について語りました。
張氏は、AIの処理を「学習」と「推論」に分けたうえで、大規模モデルの学習は限られた巨大企業にしかできず、一般企業の多くは既存モデルに自社データを組み合わせて使う推論が中心になると述べています。これに対応するため、レノボは1月に企業規模や用途別に選べるAI推論向けサーバー3機種を発表しました。エッジ向けの「ThinkEdge SE455i」、データセンター向けの「ThinkSystem SR650i」、最大8基のGPUを搭載できる大規模推論向けの「ThinkSystem SR675i」です。
電力面では、データセンターで使われる電力の約40%が冷却に費やされている現状を挙げ、水冷技術「Neptune」によって冷却用電力を計算能力に回すことで、データセンターの電力を最大40%削減できる見込みを示しました。5月には日本初となる水冷AIインフラ検証拠点「Neptuneラボ」も新設しています。
また7月には、大阪取引所や関西経済連合会と組んで産学金連携の「関西AI Hub」を立ち上げ、スタートアップの概念実証(PoC)止まりを防ぐための支援体制を整えたことも明かしました。
背景・解説
AIの処理は大きく「学習」と「推論」に分かれます。学習は膨大なデータを使ってモデル自体を作り上げる工程で、莫大な計算資源と電力を必要とします。一方の推論は、すでにできあがったモデルに自社のデータを組み合わせ、実際の業務で答えを出させる工程です。張氏の説明によれば、学習を自前で行えるのは世界でもごく一部の巨大企業に限られ、一般企業の主戦場は推論に移っていくといいます。
この推論需要の広がりが、データセンターの立ち位置を変えています。かつては単にサーバーを置く「サーバールーム」だったものが、データを蓄積し分析して新しいビジネスを生み出す拠点へと役割を広げているという説明です。同時に、需要の急拡大に供給が追いついていない状況も指摘されています。
水冷技術は、サーバーの発熱を空気ではなく液体で冷やす仕組みです。レノボの「Neptune」は冷媒に化学薬品ではなく純水を使う点が特徴で、IBMのメインフレーム時代から続く技術を継承していると説明されています。AI学習用サーバーはすでに水冷が前提の発熱量になっており、推論用サーバーでも今後は水冷対応のプロセッサーが増えると見立てられています。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
自社でデータセンターを持たない企業ほど、この話は「他人事」ではありません。インフラの電力事情やクラウド・エッジの使い分けは、外部のデータセンターやクラウドサービスを借りる側の料金やサービス品質にも波及するからです。例えば、従業員300人ほどの製造業で、生産ラインの異常検知に自社データで学習させたAIモデルを使っているとします。この会社が今後クラウドの利用料や納期に敏感になるなら、インフラ側の電力事情とコスト構造の変化を把握しておくべきです。
用途に応じてクラウド・オンプレミス・エッジを使い分けるという考え方も、実務に落とし込みやすい指針です。最先端の分析にはクラウド上の大規模モデルを使い、機密データを扱う業務は社内サーバーで動かし、現場で瞬時の判断が要る作業だけエッジ側に任せる。この三層の切り分けを、情報システム担当者は今のうちに整理しておいて損はありません。
水冷技術による電力削減は、データセンターを借りる企業のコストにも間接的に響きます。冷却効率が上がれば、同じ電力でより多くの計算をこなせるようになり、利用料の値上げ圧力を抑える方向に働くはずです。逆に言えば、電力効率の低い設備に依存し続ける事業者との契約は、中長期でコスト面の不利につながりかねません。
関西AI Hubのようなスタートアップ支援の枠組みは、資金力に乏しい中小のAI開発企業と組みたい事業会社にとって選択肢が広がる材料になります。技術力のあるスタートアップと組んで自社課題を解決したい企業にとって、こうした共創の場が地域ごとに広がるかどうかは、調達コストにも直結する話です。
不確かな点・注意
最大40%という電力削減の数字は、レノボ側の見込みとして語られたものであり、第三者機関による検証結果ではありません。実際の削減幅は、既存設備の状態や導入規模によって変わってくるはずです。
推論需要へのシフトについても、レノボ社長個人の市場観として語られた内容であり、業界全体の統計データが示されているわけではありません。関西AI Hubについても、7月の創設から間もない時点での取り組みであり、具体的な成果件数や参加企業数は明らかにされていません。
水冷技術の優位性についても、レノボ自身の技術と歴史を根拠にした説明であり、他社の水冷技術との比較データは示されていません。導入を検討する際は、自社の設備状況や契約先データセンターの対応状況を個別に確認する必要があります。