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仕事への影響

経理の消込業務、AIが差額内訳を提示し最終承認は人に残る

請求額と入金額が合わない理由を探す作業は、経理担当者の経験と勘に頼ってきました。クラシルが提供を始めた新機能は、その差額の内訳候補をAIが自動で示す仕組みです。経理の仕事がどこまで減り、どこに人の判断が残るのかを具体的な機能から確認します。

何が起きたか

クラシル株式会社は、メーカー・卸・小売企業向けAIエージェント「Kurashiru AI OS」の新機能として、「帳票変換Agent」と「消込Agent」の提供を開始しました。

帳票変換Agentは、FAXや紙・PDF・Excel・CSVなど取引先ごとに形式の違う帳票を、明細まで読み取って基幹システムや会計システムに取り込める形式のデータに変換する機能です。手書きやかすれ文字にも対応するAI-OCRを使い、読み取り結果には信頼度スコアを付け、確認が必要な項目だけを示します。

消込Agentは、変換したデータと請求・入金・発注データを照合し、差額がある場合は条件単価の違い、販促費や返品の相殺、計上時期のずれ、振込手数料といった内訳の候補と根拠を示します。公表された架空の事例では、9月に入金された128件のうち、担当者が確認するのは差額のあった9件だけとされています。消込と仕訳の最終確定は担当者の承認を経て行われ、確認済みの販促費は既存の「販促管理Agent」の分析に引き渡されます。

背景・解説

消込とは、請求データと入金データを突き合わせ、金額が一致するかを確認する経理業務のことです。食品業界では、メーカー・卸・小売の間で受発注、納品、請求、入金にかかわる帳票が毎日大量にやり取りされていますが、取引先ごとに帳票の形式が異なり、FAXや紙、PDF、Excelが今も混在しているといいます。担当者はこれらを目視で読み、基幹システムや会計システムに手で入力してきました。

なかでも負荷が大きいのが消込作業です。条件単価の違いや販促費・返品の相殺、計上時期のずれ、振込手数料などにより請求額と入金額が一致しないことがあり、差額の理由を特定するには販売条件や過去の経緯を知る担当者の経験が欠かせないとされています。人手不足が社会課題となるなか、こうした業務の効率化と属人化の解消が求められている状況があります。

クラシルは、既存の「販促管理Agent」で培った帳票のデータ化と照合の技術を土台に、今回の2つのエージェントを開発したとしています。基幹システムや会計システムを置き換えるものではなく、既存システムと連携して取込用のデータを出力する位置づけです。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

経理担当者が差額調査に費やしてきた時間の多くは、今回の仕組みで確認作業に置き換わります。全件を目視で照合するのではなく、AIが候補を示した一部の案件だけを人が見る形になるためです。例えば、取引先が数十社ある食品卸の経理担当者が1人で消込を担っている会社なら、毎月の入金件数のうち差額が出るのは一部に限られるので、確認の対象を絞り込めるだけで月内の残業時間を大きく減らせます。

一方で、AIが示すのはあくまで内訳の候補と根拠であり、消込と仕訳の確定は担当者の承認を経る設計になっています。つまり、経理担当者の役割は「差額を自力で探し出す人」から「AIが示した根拠を確認し承認する人」へと変わります。判断そのものがなくなるわけではなく、確認対象が減る分、1件あたりにかけられる時間を増やせる点が実務上の価値です。

帳票変換Agentは単独でも利用できるとされており、消込を伴わない業務でもFAXや紙、Excelの手入力をなくす効果が見込めます。例えば、紙の注文書を毎日十数枚手入力している小売企業の受発注担当者であれば、入力作業自体をなくし、入力ミスの確認に時間を使う方向へ業務を切り替えられます。

属人化の解消という観点でも意味があります。差額の理由を特定できるのがベテラン担当者に限られていた会社では、根拠が明示されることで、経験の浅い担当者でも確認作業を引き継ぎやすくなります。引き継ぎのために経験者の同席が毎回必要だった業務が、根拠を読むだけで完結する業務に変わる会社も出てくるでしょう。経理部門の人員配置を考える経営者や管理職は、消込にかけていた時間の内訳を一度洗い出し、どの部分をAIの確認作業に置き換えられるかを検討すべきです。

不確かな点・注意

今回の発表は提供開始の告知であり、実際の導入企業数や削減できた時間・件数の実績値は示されていません。公表された128件のうち9件が確認対象になったという例も、架空のサンプル企業を使った説明であり、実際の業務での成果を示すものではない点に注意が必要です。

AI-OCRの読み取り精度や、差額内訳の候補がどの程度の正確さで示されるかについても、具体的な数値は公表されていません。導入を検討する企業は、自社で扱う帳票の形式や取引先数、差額が発生する頻度に応じて、どこまで確認作業を減らせるかを個別に見極める必要があります。また、消込の最終確定は担当者の承認が前提となっているため、承認フローそのものを省略できる機能ではない点も踏まえておくべきです。

出典

  1. クラシル株式会社、帳票のデータ化から照合・消込までを自動化する「帳票変換Agent」「消込Agent」をKurashiru AI OSで提供開始

AI Topica 編集部