比較・活用
雑談の文字起こし、話者分離はKlang・要約はPlaudが得意
複数人が同時に話す立ち話や展示会の雑談は、録音しても「誰が何を言ったか」を後から追うのが難しいものです。議事録や取材録音をAIに任せている担当者にとって、話者分離と要約のどちらが得意かでツールの使い分けが変わってきます。
何が起きたか
写真・映像クリエイター向けの展示会「CREATORS EDGE 2026」の取材で、ボイスレコーダー「Plaud」を回しっぱなしにしながら各ブースを回り、途中で知人のカメラマンたちと立ち話的に情報交換をした録音が題材になっています。
この録音は、テーマの異なる複数の会話が1つのファイルに混在し、多数の話者が入れ替わり立ち替わり登場する、いわゆる雑談型の音声です。この録音をスウェーデン発の文字起こしサービス「Klang」にかけたところ、話者が8人に分けて認識され、その切り分けは正しかったと報告されています。同じ部分をPlaudで書き起こした場合は、話者の切り分けがうまくいかず、文字化できていない箇所があったといいます。
一方でサマリー(要約)生成については、Plaudが特に指示をしなくても複数のテーマごとに要約を作成できていました。Klangの標準のサマリーは一番長い雑談ブロックのみを抽出するものでしたが、展示会の複数ブース取材であることと、録音内容から各ブースの取材の切れ目を推測してブースごとのサマリーを作るよう日本語で指示すると、ブース取材と雑談パートを区別した上で、ブース単位の要約を再構築したといいます。
Klangは2026年8月に日本語版の提供を開始したばかりで、日本語音声認識モデルの学習はこれから始める段階にあるとされています。
背景・解説
文字起こしとは、録音した音声をテキスト化する作業全般を指します。かつては人間が音声を聴きながら手でタイピングするしかなく、慣れた人でも1時間分の録音の書き起こしに数時間かかる重労働でした。AIを使った自動文字起こしサービスの普及で、この作業の負担は大きく減ってきました。
話者分離(話者ダイアライゼーション)とは、1つの録音の中に複数の声が含まれるとき、どの発言が誰のものかをAIが自動で判定し分ける技術です。質問と回答が明確に分かれるインタビュー形式では比較的得意な技術ですが、立ち話のように誰かが場を仕切らず、会話や相づちが重なり合う形式では難易度が上がるといいます。
Plaudはボイスレコーダーとセットで文字起こし・要約の自動化を提供するサービスで、言語認識に使うAIモデルやテンプレートを選択できる点が特徴です。Klangはスウェーデン語モデル「Klang Pianissimo」の開発を土台に、北欧やドイツ語圏・ベネルクス地域で事業を展開してきたサービスです。日本語音声認識モデルの学習開始に向け、研究開発や海外展開のため約2.4億円の資金調達を行ったと報じられています。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
雑談や立ち話を含む録音を扱う機会が多い職種ほど、Klangの話者分離は価値を持ちます。例えば、展示会やイベントの現場取材を月に数回行う広報担当者なら、複数の相手との立ち話が1本の録音に混在しても、発言者ごとの記録を後から正確にたどれるようになります。一方、社内会議やテーマが一つに絞られた商談の録音では、要約の質がそのまま議事録の下書きの出来につながるため、Plaudの自動テーマ分け機能の方が手離れが良くなります。
使い分けの目安は、録音の「話者構成の複雑さ」です。1対1の面談や、司会進行がはっきりしている会議であれば、Plaudだけで十分です。これに対し、3人以上が入り乱れて発言する立ち話形式の録音や、展示会での複数ブース取材のように話題が次々と切り替わる録音では、Klangで話者分離済みのテキストを作成し、その上でPlaudや手作業で要約を加える二段構えが有効です。
Klangを業務に組み込む場合も、要約を丸ごと任せるのではなく、ブース単位・話者単位など具体的な指示を日本語で与える前提で使う必要があります。実際の記録でも、指示を出さなければ一番長い雑談ブロックだけが抽出され、指示を出して初めて目的に沿った要約が得られています。社内で文字起こしツールを選定する際は、録音の形式(1対1か多人数の雑談か)ごとにツールを切り替える運用ルールを決めておくと、導入後の混乱が減ります。
不確かな点・注意
今回報告されている結果は、特定のイベント取材1件の録音を対象にした比較であり、話者の人数や会話の重なり具合が異なる別の録音でも同じ精度が再現されるかは分かっていません。Klangの日本語モデルは、Klang Pianissimoとは別の日本語モデルが使われており、日本語向けの学習と評価はまだこれからの段階とされています。そのため、現時点での精度が今後さらに向上するのか、逆に変動するのかは未知数です。
また、Plaudについても、今回の録音固有の話者数や話し方の特徴によって分離精度が左右された可能性があり、すべての多人数録音で同程度に不正確になるとは限りません。価格体系や契約プラン、商用利用時の制約などサービス選定に関わる具体的な条件については、出典からは確認できません。導入を検討する場合は、自社で扱う録音の形式に近いサンプルで事前に試すことをおすすめします。