仕事への影響
バイクレンタル問い合わせ対応、AIエージェントが夜間960時間分を圧縮
AIエージェントは、営業時間外の問い合わせ対応を人手に頼らず引き受けられる新たな選択肢になっています。バイクレンタル事業者の事例は、その効果を具体的な数字で示しています。
何が起きたか
バイクレンタル事業を手掛けるキズキレンタルサービス(埼玉県川口市)は、SalesforceのAIエージェント「Agentforce」を2026年3月に導入し、全国約100拠点で展開する「レンタル819」の問い合わせ対応に活用しています。従来は営業時間内に従業員が電話やメールで対応していましたが、営業時間外に寄せられる海外旅行者らからの問い合わせはメールやウェブでの受付にとどまり、回答の遅れや何度ものやり取りが課題になっていました。
導入後の半年間で、AIエージェントが対応した問い合わせは6383件に達し、このうち61%は営業時間外の問い合わせだったといいます。これらを担当者が1件平均10分で対応したと仮定すると、約960時間分の業務量に相当する計算になります。回答精度は、蓄積したやり取りを2週間おきにデータベースへ反映することで向上し、10月中旬時点の正答率は93%に到達しました。運用は20代の社員2人が週11時間ほどの作業時間で担っており、現在は問い合わせの7~8割をAIエージェントが対応しています。人員は削減しておらず、11月からは自然言語でレンタル予約をサポートする機能も追加する予定です。
背景・解説
AIエージェントとは、あらかじめ定めたシナリオだけでなく会話の文脈に応じて自律的に判断し、顧客対応などの業務を一部代行するソフトウェアを指します。キズキレンタルサービスは、予約システムにSalesforceの「Sales Cloud」と共通データ基盤「Data 360」、「Marketing Cloud」「Marketing Cloud Personalization」を組み合わせた環境を整備し、その一部としてAgentforceを導入しました。
当初はレンタル期間の延長や手続き方法など、頻繁に寄せられる質問への回答を用意するFAQ自動応答から始まりました。しかし用意した内容だけでは対応しきれないケースが多く、担当者への引き継ぎが発生していたといいます。そこでAIエージェントが回答できなかった問い合わせや担当者の回答内容を蓄積し、複数の担当者が精査したうえで2週間ごとに参照データベースを更新する運用に改めています。対応言語は日本語、英語、中国語の3言語です。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
問い合わせ対応を抱える部門ほど、営業時間外の一次対応をAIエージェントに任せる効果は大きくなります。例えば、全国に数十拠点を持ち宿泊予約や用品レンタルを扱う会社で、夜間・休日の問い合わせ対応に2人の担当者を交代で張り付けている場合、960時間規模の業務量が浮けば、その時間を他の業務に振り向けられます。実際にキズキレンタルサービスでも、AIエージェントの運用自体は20代の社員2人が週11時間ほど関わるだけで回しており、専任の大規模な体制は不要です。
一方で、AIエージェントの導入は問い合わせ担当者を減らすための施策ではありません。キズキレンタルサービスは人員を削減せず、電話で細かい相談をしたい顧客には担当者が応じる体制を維持しています。問い合わせ対応部門の管理職は、AIエージェントを「人を減らす道具」ではなく「時間外の取りこぼしをなくし、担当者をより複雑な相談に回すための道具」と位置づけて導入計画を立てるべきです。
また、正答率93%という数字は、FAQを用意しただけで達成したものではなく、担当者の回答内容を2週間おきにデータベースへ反映し続けた結果です。問い合わせ対応をAIエージェントに置き換えようとする企業は、導入初期に精度が低い期間があることを前提に、更新体制を社内に確保する必要があります。例えば、従業員50人規模の旅行代理店が多言語対応のAIエージェントを導入する場合、最初の数カ月は担当者2人程度を更新作業に充てる想定で計画を組むと無理がありません。
不確かな点・注意
記事中の数字は、キズキレンタルサービスおよびキズキホールディングスの担当者への取材に基づくもので、第三者による算定ではありません。960時間という試算も「1件当たり平均10分」という仮定を置いた概算であり、実際の対応時間は問い合わせ内容によって幅があります。正答率93%の算出方法や対象期間の詳細、業種や拠点規模が異なる企業への効果の大小は明らかになっていません。11月以降に追加される予約サポート機能や、2027年以降に計画されている個別対応・マーケティング施策の具体的な効果も、現時点では示されていません。