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京葉銀行、AIで基幹システムの「生きた設計書」自動生成へ
基幹システムの中身を知る担当者が退職したら、誰がその仕様を説明できるでしょうか。この問いに正面から向き合ったのが、千葉県の京葉銀行です。AIによるソースコード解析という切り口で、金融業界に共通するレガシー化の課題に挑んでいます。
何が起きたか
LiNKX株式会社は、モダナイゼーション特化型AIソリューション「LiNKX AXcelerator」を株式会社京葉銀行が導入したと発表しました [1]。
京葉銀行はこの導入を通じて、長年の改修で複雑化した基幹システムの設計書を自動生成し、ソースコードの変更に合わせて常に最新の状態、いわゆる「生きた設計書」に保つ仕組みを検証しているといいます [1]。
京葉銀行は、システム仕様を記述したドキュメント類を常に最新のソースコードと一致させて維持・管理することの難易度が高く、障害対応や機能追加のたびに担当者が過去のソースコードを直接読み解く状況が発生していたといいます [1]。
システム改修時には変更に伴う影響範囲が正確に予測できず、広範囲なシステムテストケースを設定するなど時間とコストの負担が課題になっていたとしています [1]。今回の検証では、日々の保守運用業務の効率化とともに、将来のシステム刷新に向けた基盤整備を目指すとしています [1]。
背景・解説
基幹システムとは、勘定系や決済系など企業活動の根幹を支える大規模な情報システムを指します。銀行の場合、長年にわたる改修の積み重ねによってプログラムの構造が複雑化し、全体像を把握することが難しくなる「レガシー化」が業界共通の課題になっています。
こうした状況で問題になるのが「属人化」と「ブラックボックス化」です。属人化とは、特定の担当者の経験や記憶に頼らないとシステムの仕様が分からなくなる状態を指します。ブラックボックス化は、仕組みが複雑になりすぎて誰も詳細を把握できなくなることをいいます。
「LiNKX AXcelerator」は、COBOLやPL/I、アセンブラなどの古い言語で書かれたソースコードを解析し、詳細設計書を自動生成する機能や、プログラム間の関係性を解析して影響調査の工数を減らす機能などを備えています [1]。ソースコードから実行に不要な情報を除く前処理と、AIによる自己検証ループにより、事実と異なる仕様を作り出してしまう「ハルシネーション」を抑える仕組みも組み込まれているといいます [1]。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
基幹システムの改修コストと障害対応時間に悩む金融機関ほど、この種のAI活用による効果は大きくなります。例えば、地方銀行のシステム部門で3人の担当者が勘定系の保守を回している場合、そのうち1人が退職すれば残る2人だけでは仕様を正確に把握できなくなるリスクが生じます。設計書がソースコードの変更に合わせて自動更新される仕組みがあれば、担当者の異動や退職があっても仕様の引き継ぎに要する時間を圧縮できます。
影響調査やテスト範囲の特定にかかる時間の削減も実務上の意味が大きい点です。改修のたびに広範囲なテストケースを設定していた業務は、プログラムとデータの関係性が可視化されることで対象を絞り込みやすくなります。例えば、月次で数十件の改修案件を抱えるシステム部門であれば、影響範囲の調査時間を案件ごとに削減できれば、月単位で見た工数の総量に差が出ます。
将来のシステム刷新を計画している経営層にとっても意味は小さくありません。刷新の可否や規模を判断する材料として、現行システムの詳細設計書が整っているかどうかは前提条件になります。設計書がない状態で刷新プロジェクトを始めれば、要件定義の段階でつまずくリスクが高まります。今回の京葉銀行の取り組みは、その前提条件を整える段階の投資と位置づけて読むべきです。
不確かな点・注意
今回の発表は「導入」の段階であり、効果が数値で示されたものではありません。設計書の自動生成や自己検証ループがどの程度の精度でハルシネーションを抑えられているかは、出典の中では具体的な数値として示されていません。
京葉銀行のコメントでも「一歩一歩課題を克服し、着実に実績を積み上げていく」ことへの期待が述べられており、現時点では検証段階にとどまっています [1]。保守運用業務の効率化や将来のシステム刷新がどの程度前進したかは、今後の続報を確認する必要があります。
また、今回の取り組みはCOBOLなど古い言語で書かれた基幹システムを対象にしたものです。異なる言語や規模のシステムを持つ企業にそのまま当てはまるとは限らない点にも注意が必要です。