仕事への影響
情シス部門の役割、効率化担当から新事業の発案者へ
ITリーダーの肩書きが同じでも、求められる仕事の中身は変わりつつあります。社内の効率化を回すだけの役割から、新しい製品やサービスの種を見つける役割へと、期待の重心が動いています。
何が起きたか
ガートナージャパンは10月1日、国内企業のデジタル化の取り組みと関連テクノロジーの導入状況に関する調査結果を発表しました。調査は4月に実施され、対象は従業員500人以上の国内企業のITリーダーです。
生成AIやエージェント型AIへの期待を尋ねたところ、「社内プロセスの最適化や省力化」を挙げた回答が43.4%で最も多くなりました。これに続いたのは「システム開発工程の効率化」「新たな製品やサービスのアイデア創出」「社外プロセスの最適化・省力化」「人材不足・スキル不足の補完」です。従業員向け業務の効率化だけでなく、自社の製品・サービスの在り方や、顧客対応・サービス提供の在り方そのものを見直す動きも見られたといいます。
デジタル化関連のテクノロジー導入では、IoTプラットフォーム(クラウド)をすでにビジネスに導入している企業が35%を超えました。2025年調査の30.3%、2023年調査の20.9%から着実に増えており、導入済み企業に評価・検証中の企業を加えると約6割に達しています。サイバー攻撃や内部不正への防御技術についても、導入・検証が進んでいる状況が示されました。
背景・解説
ここでいう「デジタル化」とは、業務プロセスや製品・サービスにITや生成AIを組み込み、仕事の進め方そのものを見直す取り組みを指します。「エージェント型AI」は、指示を受けて単発の作業をこなす従来の生成AIとは異なり、複数の作業を自律的に連携させて進めるタイプのAIです。
今回の調査で目を引くのは、期待の1位が依然として「社内プロセスの最適化・省力化」でありながら、「新たな製品やサービスのアイデア創出」が上位の選択肢として並んでいる点です。従来、ITリーダーの主な役割は、業務を効率化しコストを下げることに置かれてきました。そこに、新しい事業の種を見つけるという役割が加わり始めています。
ガートナージャパンの池田武史氏は、デジタル化を推進する企業について「テクノロジーの壁や社内外への実装の壁がどこにあるのか」「どういった取り組みが進んでいるのか」「どういったベンダーが頼りにされる傾向にあるのか」を把握し、社外環境も含めた中長期的な取り組みを進める必要があるとコメントしています。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
ITリーダーに求められる成果物は、業務改善の報告書から新事業の提案書へと重心が移ります。従業員500人以上の企業では、効率化の実行だけを担うITリーダーの評価軸が、今後は変わっていきます。
例えば、従業員800人規模の製造業で情報システム部長を務める担当者を考えてみます。これまでの主な仕事は、生産管理システムの運用コストを年間で数百万円単位で削減することでした。しかし今回の調査が示すように、回答企業の4割超が「社内プロセスの最適化・省力化」への期待を挙げる一方で、「新たな製品やサービスのアイデア創出」への期待も上位に並んでいます。この情シス部長には、既存システムの運用報告に加えて、生成AIを使って新しい保守サービスやデータ活用型の製品企画を1件でも提案することが求められるようになります。
IoTプラットフォームの導入企業が35%を超え、3年前の2023年調査時の20.9%から約1.7倍に増加している事実も、見過ごせません。導入・検証を含めると約6割の企業がすでに動いているため、自社がまだ検討段階であれば、他社との差は年単位で開いていきます。情シス部門が3人以下の中小企業であっても、クラウド型のIoTプラットフォームなら初期投資を抑えて評価段階に入ることができます。
ITリーダーは、自部門のコスト削減だけを報告書に並べるべきではありません。事業部門と組んで、AIを使った新しい製品・サービスの案を四半期に1件は出す役割を担うべきです。社内の効率化だけを担当する人材は、評価の対象として物足りなくなります。
不確かな点・注意
今回の数値は、従業員500人以上の国内企業のITリーダーへの回答に基づくもので、中小企業や現場の実務担当者の受け止め方を直接示すものではありません。「期待」を尋ねた設問であり、実際に新事業の創出につながった成果を示す数字ではない点にも注意が必要です。
IoTプラットフォームの導入率や導入・検証企業の割合についても、業種や企業規模による差がどの程度あるかは、この発表だけでは分かりません。サイバー攻撃や内部不正への防御技術の導入状況についても、具体的な割合は示されていないため、自社の取り組み状況と単純に比較することはできません。