仕事への影響
議事録作成はAI主体、最終的な意思決定は人主導 会社員1104人調査で判明
議事録作成やデータ分析はAIに任せてよいと考える会社員は多いものの、最終的な意思決定になると話は変わります。会社員1104人への調査から、業務ごとに異なる「AIに任せてよい範囲」の輪郭が見えてきました。
何が起きたか
チェンジホールディングスは2026年9月4日、AIと人の役割分担に関する意識調査の結果を発表しました。全国の会社員・役員1104人を対象にインターネットで調査し、課題の整理やデータ分析、議事録作成、最終的な意思決定など13業務について、AIと人の役割分担をどうするのが適切だと考えるかを聞いています [1]。
13業務の平均では「人主導」が61.2%、「AI主体」が38.8%でした。業務別に見ると、AI主体の回答率が最も高かったのは議事録作成で44.7%、データ分析が44.0%、情報の整理と情報の収集・調査がそれぞれ43.8%で続きました。一方、AI主体の回答率が最も低かったのは課題の整理で25.3%でした [1]。
世代別では差がさらに広がります。最終的な意思決定を「AI主体」でよいとした割合は、20代が59.1%、30代が36.0%、40代が23.9%、50代が12.1%と、年代が上がるほど低くなりました。一方、AIに仕事を奪われる懸念を示した割合は20代が67.5%で最も高く、50代の26.5%を大きく上回っています [1]。
業種別では、13業務平均のAI主体回答率が金融で59.4%と最も高く、商社・卸売52.4%、IT・通信47.7%と続きました。医療・介護は23.4%で最も低く、金融は13業務のうち12業務でAI主体回答率が最も高い一方、医療・介護は13業務中12業務で最も低くなっています [1]。
背景・解説
今回の調査で使われている「人主導」「AI主体」という区分は、実際の利用率や自動化率を示すものではありません。「人が主体でAIを使わない」「人が主体でAIを補助的に使う」という回答は「人主導」に分類され、「AIが主に実施して人が確認・修正する」「人が最終判断だけを担う」「AIが自律的に実施する」といった回答は「AI主体」に分類されています [1]。
つまり「AI主体が38.8%」という数字は、業務の約4割が現時点でAIによって自動化されているという意味ではありません。あくまで、AIが主に実施する形が適切だと考える回答者がどれだけいたかを示す意識調査の結果です [1]。
この区分を踏まえると、単純な情報処理やアウトプット作成に近い業務ほどAI主体を受け入れやすく、何が問題なのかを整理したり、最終的な判断を下したりする業務では人が担うことを求める傾向が読み取れます。役職別に見ても、13業務平均のAI主体回答率は一般社員33.2%から部長55.4%まで上がり続けた後、役員では43.7%に下がっており、経営層と現場に近い管理職の間で考え方に違いがある可能性が示されています [1]。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
議事録作成やデータ分析、情報整理といった作業型の業務は、部門や役職を問わずAI主体への切り替えを進めて十分です。例えば、従業員80人ほどの製造業で総務担当が3人という会社なら、会議の議事録作成や日報の整理をAIに任せることで、月あたり数十時間分の手作業を減らせます。この種の業務は成果物を人が確認するだけで運用できるため、人手不足を抱える部門ほど早く着手すべきです。
一方、最終的な意思決定や課題の整理をAIに委ねる判断は、年代や役職だけで決めるべきではありません。調査では20代の59.1%が意思決定のAI主体化を容認していますが、同じ20代の67.5%が自分の仕事がAIに代替される懸念を抱えています。この2つの数字は矛盾しているのではなく、AIを使いこなす必要性を強く感じている層ほど権限移譲にも前向きになるという構図を示しています。例えば、20代社員が中心の営業チームでAIに提案資料の骨子作成まで任せる場合、最終的な提案内容の採否は課長以上が確認する体制を組んでおけば、スピードと責任の所在を両立できます。
業種による差も実務上の判断材料になります。金融業では13業務平均のAI主体回答率が59.4%と高く、医療・介護は23.4%にとどまりました。例えば、地方銀行の融資審査部門が資料の構成設計や比較検討にAIを使う場合、規制や責任の重さを踏まえて最終承認は必ず人が行う体制を維持すべきです。逆に医療・介護の現場では、記録作成のような周辺業務にAIを絞って導入するだけで効果は十分に得られます。
勤務形態別では、AI主体の容認度が出社中心33.1%に対しハイブリッド55.8%、フルリモート56.1%と大きく開いています。テレワークが中心の部門ほど、AIによる作業支援を前提とした業務フローの整備を優先すべきです。逆に出社中心の職場では、まず議事録作成やデータ集計といった単純作業からAI導入を試すのが現実的な進め方になります。
企業がAI活用を進める上で問われているのは、AIを使うかどうかではありません。どの業務を、どこまでの権限でAIに任せるかを部門ごとに明文化することが、次の一歩になります。
不確かな点・注意
今回の調査は会社員・役員1104人を対象にした意識調査であり、実際にどの業務でAIがどれだけ使われているかを示すものではありません。回答者が「適切だと考える」姿と、実際の運用実態には差がある可能性があります [1]。
役員のAI主体回答率が部長より低いという結果についても、調査元は「役員がAIに否定的だと断定することはできない」としており、原因を特定する分析は示されていません [1]。
勤務形態とAI主体回答率の関係についても、職種や企業のIT環境など別の要因が影響している可能性があり、勤務形態そのものが原因だと結論づけることはできません [1]。業種別の差についても、業務特性や規制、扱う情報、意思決定に伴う責任など複数の要因が関係している可能性があり、単純比較には注意が必要です [1]。