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ELYZA、AIがAIを自ら改善する新組織「ELYZA RSI Research」設立

AIの開発そのものをAIが担う動きが、国内企業から具体的な形で示されました。社内でAIツールの選定や更新対応を任されている担当者にとって、モデルの更新速度がどこまで速まるのかは放っておけない論点です。ELYZAの新組織設立は、その最前線を示す事例です。

何が起きたか

KDDIグループでLLM(大規模言語モデル)開発を手がけるELYZAは10月2日、AIが自分自身の開発プロセスを繰り返し改善していく仕組み「RSI(再帰的自己改善)」に関する研究を担う新組織「ELYZA RSI Research」を設立すると発表しました。あわせて、研究を通じて構築した「自律研究基盤」をもとに、音声対話AIエージェント「ELYZA Voice Agent」を第1弾として開発し、一部パートナーへの提供を始めるとしています。

ELYZAは、KDDIのほか三井住友カードや東京海上日動、明治安田生命など50社以上に法人向けAIソリューションを提供し、業務ツール「ELYZA Works」も展開している企業です。発表では、問い合わせ対応の業務手順やツール利用の適切さを測るベンチマーク「ELYZA Agent Tasks: Customer Service」も公開するとしました。

背景・解説

RSIとはRecursive Self-Improvementの略で、AIが自らの能力や開発プロセスを繰り返し改善し、その成果を次の開発に反映させる仕組みを指します。AIエージェントの開発には、応答を生み出す「基盤モデル」、それを動かす「ハーネス」、出来栄えを測る「評価機構」の3要素が必要で、これまでは人間のAIリサーチャーがこの3つを統括し、改善のループを回してきました。

2026年に入り、このリサーチャーの役割の一部をAIエージェント自身が担うケースが増え、フロンティアモデルの開発では以前の3カ月ごとのリリース間隔が毎月更新へと短くなったといいます。ELYZAによれば、現状はまだ人間が開発のループに関わる段階で、人間が全く介在しない「Closed Loop」に至るRSIは実現していません。曽根岡侑也代表取締役は、シンプルなタスクでのLLM開発では2024年時点ですでに各社の差が縮まっており、研究の主戦場は創薬や材料科学にAIを活用する「AI for Science」や、数時間から数日かかる複雑な作業をAIがやり遂げる「Long Horizonタスク」に移っていると説明しています。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

社内に専任のAI研究者を抱えていない会社ほど、この動きを自社のAI活用計画の前提として見直す必要があります。AIの開発速度そのものが人間の手を離れて速まる段階に入ったことで、ベンダーが提供するモデルや機能の更新間隔は今後さらに短くなります。例えば、従業員300人規模のコールセンターを運営する企業で、問い合わせ対応AIの導入を担当する情シス担当者が1人しかいない場合、半年に一度の機能確認では更新内容を追いきれなくなります。四半期に一度だった社内の動作検証を、毎月実施する体制に切り替えるべきです。

また、ELYZAが示した「ELYZA Voice Agent」のように、会話対応だけでなく予約変更や契約更新といった後続の手続きまでAIが担う設計は、コンタクトセンター業務の人員配置を見直す材料になります。例えば、契約更新の電話受付を担当するオペレーターが5人いる保険会社なら、手続き処理をAIに任せることで、オペレーターは例外対応や苦情処理に人数を振り向け直せます。国内企業にとっては、海外のフロンティアモデル任せにせず、国内でもAI開発を担う組織を持つ動きが出てきたこと自体が、調達先選定の選択肢を増やす材料になります。

不確かな点・注意

ELYZA自身は、現時点でRSIを実現したわけではないと明言しており、今回の発表はあくまで研究体制の構築と位置付けられています。AIが人間の介在なしに自己改善を完結させる「Closed Loop」の段階に至る時期や、その安全性を担保する具体的な基準は示されていません。

曽根岡氏はフロンティアモデルの能力が高まりすぎることで、リスク管理や規制により一般公開が制限される可能性に言及していますが、これが日本国内の研究にどの程度影響するかは明らかにされていません。ELYZA Voice Agentの提供先や対応業界の詳細、ベンチマーク公開の具体的な時期についても、現時点で公表されている情報は限られています。

出典

  1. 「AIによるAI開発」へ加速 ELYZAがRSI(再帰的自己改善)に向け新体制

AI Topica 編集部