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解説

データセンターが「建てる」から「置く」に変わる仕組み

生成AIの利用拡大で、データセンターをどこに、どれだけ早く用意できるかが経営課題になりつつあります。工場であらかじめ組み立てて運ぶ「コンテナー型データセンター」は、この課題への一つの答えとして関心を集めています。

何が起きたか

生成AIの急速な普及により、データセンターの需要が世界的に拡大しています。国際エネルギー機関(IEA)は、世界のデータセンターによる電力消費が2030年までに約945TWhに達し、現在の2倍以上になると予測しています。この増加の最大の要因はAIだといいます。

こうした状況を背景に、サーバーや電源、冷却設備をあらかじめ組み込んだ「コンテナー型データセンター」への関心が高まっています。韓国のLG CNSは、最大576基のGPUを収容し、電源・冷却設備も一体化したコンテナー型の「AI Box」を発表しました。工場であらかじめ組み立てることで、約6カ月で構築できるといいます。複数のコンテナーを組み合わせ、大規模化することも想定しているとのことです。

国内でも、三菱重工業が工場や研究施設などでのAI利用を想定したコンテナー型のエッジデータセンターを展開しています。

背景・解説

コンテナー型データセンターとは、サーバーや電源設備、空調・冷却設備などを輸送用コンテナのような箱の中にあらかじめ組み込んで出荷する形式のデータセンターを指します。工場でまとめて製造し、設置場所に運んで据え付けるだけで稼働できるため、「建てる」のではなく「置く」データセンターと呼ばれます。この仕組み自体は以前から存在していました。

改めて関心が集まっている背景には、AIがコンピューティング需要の量だけでなく、必要とされる「場所」と「スピード」を変えている事情があります。大規模なAI基盤を従来型のデータセンターだけで賄おうとすると、用地の取得から設計、建設までに長い時間がかかります。需要の立ち上がりに合わせて必要な場所に設置し、必要になれば増設できるコンテナー型は、この時間の壁を小さくする手段になります。

もう一つの変化は、AIを使う場所そのものです。これまで生成AIは、巨大なデータセンターでモデルを学習・推論するものというイメージが強くありました。しかし、ロボットや自動運転、製造設備など現実世界で動く「フィジカルAI」が広がると、データが生まれる工場や研究施設の近くでAIを処理したいという需要が増えます。三菱重工業のコンテナー型エッジデータセンターは、こうした現場近くでの処理を想定した例といえます。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

拠点ごとにAI処理能力を持ちたい製造業や物流業ほど、コンテナー型データセンターを検討する価値は大きくなります。例えば、複数の工場に生産ラインの画像検査AIを導入したい従業員500人規模の製造業なら、各工場の敷地内にコンテナー型のエッジ拠点を1基ずつ置けば、大規模なデータセンターを新設する数年がかりの計画を待たずに運用を始められます。約6カ月という構築期間は、新規に建屋を設計・建設する場合と比べて、投資の意思決定から稼働までの期間を大きく縮める材料です。

情報システム部門にとっても、検討すべき論点が変わります。従来はデータセンターの立地選定と建設工事が主な検討事項でしたが、コンテナー型が選択肢に入ると、電源容量や冷却方式、搬入経路といった設置条件の確認が優先事項になります。例えば、工場敷地内に576基規模のGPUを収容するコンテナーを置く場合、受電設備の増強工事が別途必要になる例もあり、設置担当者は建屋工事だけでなく電力会社との協議も早期に始めるべきです。

一方で、全てのデータセンターをコンテナー型に置き換える必要はありません。大量のデータを長期間蓄積し、災害対策やセキュリティ要件が厳しい基幹システムには、引き続き大規模な従来型データセンターが適しています。使い分けの判断軸を社内で持っておくことが実務上の備えになります。

不確かな点・注意

出典には、コンテナー型データセンターの具体的な導入コストや国内での普及台数は示されていません。IEAが示した945TWhという予測も、AI以外の要因を含めた電力消費全体の見通しであり、コンテナー型の比率を示すものではない点に注意が必要です。

LG CNSの「AI Box」や三菱重工業のエッジデータセンターについても、価格や契約実績、稼働中の拠点数は明らかにされていません。約6カ月という構築期間がどの地域や条件を前提にした数字かも不明です。コンテナー型が従来型データセンターをどの程度置き換えていくかについて、出典の時点では具体的な見通しは示されていません。

出典

  1. データセンターは「建てる」から「置く」に--AI時代で注目のコンテナー型

AI Topica 編集部