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Cloudflare、請求書やメールを読むAI「Clairic」を発表 処理時間69%短縮の検証結果も
企業が扱う請求書や問い合わせメールは、書式も言い回しもばらばらです。そこから数字や日付を取り出す作業に生成AIを使うと、時間がかかったり実在しない数字を出力したりする悩みが付きまといます。この課題に向けて、Cloudflareが新しいタイプのAIモデルを発表しました。
何が起きたか
Cloudflareは2026年10月19日、文章や画像から必要な情報を抽出したり、数値の計算や予測をしたりできるAIモデル「Clairic」を発表しました。Clairicは「System One」と呼ばれるAIモデルの一種で、一般的な大規模言語モデル(LLM)よりも高速かつ低コストで情報を処理でき、特定の用途では精度も向上するとされています。
Clairicは文章を一語ずつ生成するLLMとは異なり、入力されたデータを1回の処理で分析し、必要な値を直接出力する仕組みです。取り出したい情報の種類を指定すると、注文番号や発生時刻などの抽出に加えて、障害が続いた時間の計算や影響を受けた利用者数の推定も行えます。該当する情報が見つからない場合は「null」を返すため、存在しない情報を誤って補ってしまう問題を減らせるとのことです。
画像からの抽出にも対応しており、斜めから撮影されて文字が読み取りにくいレシートでも、注文番号や購入日時、商品の数量や価格を抽出できたと報告されています。将来の数値の予測にも対応し、実際にアメリカの空港保安検査場の利用者数を21日間予測したテストでは、実際の人数との誤差は平均3.3%でした。
Cloudflareは、商品破損に関する顧客メールの処理をすべてLLMの「GLM-5.3」に任せた場合と、Clairicと別のモデル「Clef」を組み合わせた場合を比較しています。前者は61.7秒かかったのに対し、後者は19.3秒で完了し、処理時間は約69%短縮、コストは約49%削減できたとのことです。Clairicは記事作成時点でCloudflareのAI実行サービス「Workers AI」を通じてプレビュー版が利用できます。
背景・解説
「非構造化データ」とは、請求書やメール、レシートのように、記載項目の順序や書式が決まっていないデータのことを指します。表計算ソフトのように列と行が決まっている「構造化データ」と違い、同じ情報でも文章ごとに書かれ方が異なるため、機械的に読み取るのが難しいという特徴があります。
企業の現場では、こうした非構造化データから必要な数字や日付を人手で拾い出す作業が長く残ってきました。近年はLLMにこの作業を任せる動きが広がりましたが、LLMは文章を一語ずつ生成する仕組み上、回答が出るまでに時間がかかりやすく、実際には書かれていない数字を作り出してしまう場合もあります。抽出した値が正しい形式になっているかを後から確認する工程も必要で、大量のデータを扱うほど処理時間とコストが膨らむ点が課題でした。
Cloudflareは以前から、選択肢の中から回答を選ぶ「Jev」や「Clef」といったSystem Oneモデルを提供してきました。Clairicはこの系列に加わる新顔で、具体的な数値や日付を直接取り出す「抽出モデル」として、用途を情報抽出や数値予測にまで広げた点が特徴です。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
経理や問い合わせ対応を少人数で回している会社ほど、この種の抽出特化AIの恩恵は大きくなります。例えば、従業員50人規模の物流会社で経理担当が2人、月間500件の請求書を手作業で確認しているケースなら、金額や取引先名の読み取りだけを高速なモデルに任せ、判断が必要な部分だけ人が見る分業に切り替える余地があります。
今回の検証で示された「処理時間69%短縮、コスト49%削減」という数値は、1件あたりの処理が重いほど効果が効いてくる種類の改善です。問い合わせ対応を担うカスタマーサポート部門で、1日200件のメールを一次仕分けしているチームなら、障害の発生時刻や影響範囲をAIが先に抜き出し、担当者は返信文の作成と最終確認に集中する体制が現実的になります。
すべての業務をLLM任せにする必要はもうありません。数字の抽出や予測といった「決まった形で答えを出す」作業はClairicのような専用モデルに任せ、文章の作成や例外対応はLLMに残すという役割分担が、コストと速度の両面で合理的です。情シス担当者が複数のAIサービスを比較検討する際には、処理内容ごとにモデルを使い分けるという選択肢を評価基準に加えるべきです。
不確かな点・注意
Clairicは記事作成時点でプレビュー版の提供にとどまり、正式な料金体系や提供時期は明らかにされていません。日本語の文章や帳票に対してどの程度の精度が出るかについても、出典の時点では具体的な報告がありません。
Cloudflare自身も、複数の計算を組み合わせる複雑な処理や長期的な予測にはまだ課題があると説明しています。空港利用者数の予測テストでも、連休中には実際の利用者数が予測範囲を上回った日があり、特殊な状況下では精度が崩れる場合があることがうかがえます。導入を検討する際は、自社が扱うデータの種類でどの程度の精度が出るか、個別に確認する姿勢が欠かせません。