仕事への影響
営業・企画職の提案書作成、AIに「任せる」研修が示す業務設計の変化
生成AIに文章を書かせるだけなら、すでに多くの企業が試しています。では、提案書作成や調査レポートの一連の工程を丸ごとAIに任せるには、何が足りないのでしょうか。伊藤忠インタラクティブが始めた法人向け研修が、その答えの一端を示しています。
何が起きたか
伊藤忠インタラクティブは、「Claude」および「Claude Code」を使った法人向け「AIエージェント実装研修」の提供を開始しました。
一般的な生成AIの使い方を学ぶ研修ではなく、提案書作成や調査レポートなど、受講者自身が担当する業務を題材にAIエージェントを構築し、業務の自動化を目指す内容になっています。
研修の特徴は、あらかじめ用意された教材を一律に学ぶのではなく、受講者が実際に改善したいと考えている業務を題材にする点です。情報収集からデータ整理、成果物の作成までの一連の流れを、受講者自身が設計し直すプログラムになっています。
背景・解説
AIエージェントとは、単発の指示に対して回答を返す従来の生成AI利用とは異なり、複数の作業工程を連携させて一連の業務を実行する仕組みを指します。
例えば提案書の作成では、必要な情報を集める、データを整理する、構成案を作る、文章を書くという複数の工程を経て完成に至ります。生成AIが文章の初稿を作れるようになっても、その前段階の情報収集やデータ整理まで自動で連携させるには、各工程の作業手順と判断基準をあらかじめ整理し、AIが実行できる形に落とし込む設計作業が必要です。
伊藤忠インタラクティブによれば、こうした自動化を進めるうえでは、AIに何を指示するかだけでなく、どの作業を任せ、どの情報を使い、どの段階で人が確認するかを具体化する作業が欠かせないといいます。単発の指示で回答を得る使い方とは違い、業務の流れそのものを見直す設計力が求められる点が、従来の生成AI研修との大きな違いになっています。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
提案書作成や調査レポート作成を主な業務とする営業・企画職ほど、この研修が示す考え方の恩恵は大きくなります。これまでAIに文章の初稿だけを書かせていた担当者は、情報収集からデータ整理、構成案作成までの工程を自分の手で設計し直す必要が出てきます。
例えば、従業員50人規模の広告代理店で、営業企画担当が月に10件前後の提案書を作成している場合を考えてみます。現状は商品データの収集やクライアント情報の整理に数時間、文章執筆にさらに数時間を費やしているとすれば、各工程の手順と判断基準を整理してAIエージェントに落とし込むことで、担当者が直接手を動かす時間を大きく減らせます。その分、担当者の役割は「文章を書く人」から「AIが出した構成案や下書きを確認し、クライアントの事情に合わせて最終判断を下す人」に変わります。
調査レポートを扱う部門でも同様です。市場調査担当が四半期ごとに数十件のレポートをまとめている会社なら、情報源の選定基準やデータの整理ルールを一度明文化しておけば、次回以降は同じ基準でAIに収集・整理を任せられます。担当者が増やすべきスキルは、文章力よりも「どの判断をAIに委ね、どの判断を自分が持つか」を切り分ける設計力になります。
管理職にとっても影響は小さくありません。部下の業務を「AIに任せられる部分」と「人の判断が必要な部分」に分けて整理する作業自体が、業務の棚卸しにつながります。結果として、属人化していた提案書作成のノウハウが手順として見える化され、新人教育の負担も軽くなります。
不確かな点・注意
今回の発表では、研修の受講料や期間、対象となる企業規模、受講者数についての具体的な記載はありません。実際にどの程度の業務時間が削減できるかという定量的な成果も示されていません。
また、研修で構築したAIエージェントがどの業種・業務にまで応用できるかは、出典の範囲では明らかになっていません。提案書作成や調査レポート以外の業務への適用可否は、今後の情報を確認する必要があります。