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侵入攻撃が1社4000円に、自律型AIエージェントが数百サイトを自動攻撃

決済データを盗む不正侵入が、驚くほど安く、驚くほど自動で進んでいた実態が明らかになりました。中小規模のECサイトを運営する企業ほど、他人事では済まされない内容です。

何が起きたか

セキュリティ企業のGambit Securityが、ある攻撃者の中継サーバーを入手して調査したところ、自律型のAIツールが不正侵入の大部分を自動で進めていた実態が明らかになりました。使われていたのは「Hermes」「Strix」「Cairn」という3種類のオープンソースAIツールで、脆弱性の探索から侵入、権限拡大、機密情報の探索、データの持ち出しまでを自律的にこなしていたといいます。

Strixはウェブサイトを調べて侵入に使えそうな脆弱性を探し出し、Cairnは「管理者権限を取得する」といった目標を与えられると数時間にわたって試行錯誤を続けます。全体を統括するHermesが攻撃の進行を管理する仕組みで、260セッションで人間が入力したプロンプトは1951件にとどまりました。1つの標的への指示はわずか数件だったといいます。

調査期間中、少なくとも27社で何らかの侵害が確認されました。また、スキマー設置が指示された企業は少なくとも27社にのぼり、このうち19社で実際の設置が確認されたとのことです。関連するスキマーに感染したサイトは100以上見つかり、2社だけで60万件を超える有効期限内のクレジットカード情報が持ち出されていたとのことです。流出したカードの約79%はアメリカで発行されたものでした。

費用面の実態も示されています。101件のスキャンを基に攻撃者自身が算出した1標的あたりの平均コストは25.46ドル(約4000円)で、最安のケースは3.13ドル(約500円)、最も高いケースでも79.31ドル(約1万2600円)にとどまりました。なお2026年9月以降、日本企業でも不正アクセスによる個人情報流出が相次いでおり、AIの悪用が進んでいるのではないかという見方が報じられています。

背景・解説

自律型AIエージェントとは、人間が最終的な目標だけを与えれば、その達成に向けた手順を自分で計画し、実行し続けるAIを指します。従来のツールが指示された1つの作業をこなすだけなのに対し、自律型エージェントは状況を見ながら次の行動を自分で判断し、失敗すれば別の経路を試すという点が異なります。

スキマーとは、ECサイトの決済画面に埋め込まれ、入力されたクレジットカード番号などを攻撃者に送信する不正なプログラムのことです。正規のJavaScriptファイルの末尾にコードを付け加えたり、外部スクリプトを紛れ込ませたりする形で設置されます。

これまで多数の企業を狙う大規模な攻撃では、標的ごとにシステムを調べて侵入方法を個別に考える人手が必要で、採算が合う企業にしか手が回りにくいという側面がありました。今回の調査では、人間が標的を選んで短い目標を与えるだけで、AIが脆弱性の発見から侵入、内部探索までを長時間かけて自動で続けていました。主要なツールはいずれもオープンソースで、標的を1社増やす追加コストは数十ドル程度にとどまるとGambit Securityは説明しています。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

攻撃対象として「狙う価値がない」企業は、もう存在しないと考えるべきです。従業員50人規模で独自開発のECサイトを運営する地方の衣料品販売会社を例にすると、これまでは大手ECモールのシステムを使わない限り大規模攻撃の標的になりにくいと見られてきましたが、今回の攻撃者は大手ECプラットフォームを使うサイトを除外し、未知の脆弱性を抱えやすい独自開発システムの店舗を重点的に選んでいました。実際にはFortune 500クラスの宿泊・航空関連企業でも何らかのアクセスが確認されており、企業規模の大小で安心できる話ではありません。

侵入にかかる時間と費用も、経営判断を変えるレベルまで下がっています。1標的あたりの攻撃コストは平均で約4000円、最も安いケースでは約500円しかかかっておらず、侵入そのものも1日以内、早ければ数時間で完了した例があります。情報システム担当者が1人しかいない中小企業であっても、脆弱性診断や多要素認証の強化にかける予算を後回しにする理由は成り立ちません。

決済ページの改ざんは、一度直しただけでは終わりません。あるオンラインショップでは、修復されたファイルを2分ごとに監視し、不正コードが消えていれば再び追加する仕組みがサーバーに仕込まれていました。ECサイトを運営する企業の情シス担当者は、障害対応として「ファイルを元に戻した」だけで安心せず、不正な定期処理やユーザーアカウントが残っていないかまで点検すべきです。

侵害後にデータを消去する動きにも警戒が必要です。自転車販売会社の事例では、AIエージェントが証拠隠滅のためにテーブルを削除した際、条件設定の誤りからバックアップを含む180個のテーブルが消えてしまいました。年商数億円規模の企業であっても、バックアップは本番環境と切り離した場所に複数世代保管しておく運用が欠かせません。

不確かな点・注意

Gambit Securityの報告はあくまで暫定的な調査結果だと明記されています。流出データやツール、スキマーの痕跡、攻撃ログなどを組み合わせて推定した内容であり、未調査の攻撃プロジェクトが多数残っているため、実際の被害規模は今回判明した数字をさらに上回る可能性があります。

日本国内で2026年9月以降に相次いだ個人情報流出のインシデントと、今回確認された3つのAIツールとの直接の関連は、出典では明らかにされていません。あくまで「AIの悪用が進んでいるのではないか」という見方が併記されているにとどまります。

また、攻撃にかかった総費用として1万2000~1万8000ドル(約190万~285万円)という推定値も示されていますが、これは攻撃者側のAI利用料金の推計であり、被害企業側の損害額とは別の数字である点にも注意が必要です。

出典

  1. 爆増する不正侵入と個人情報流出の恐るべき全自動手口、自律型AIエージェントが1件あたり激安4000円台で数百のオンラインサイトを延々と攻撃し続けている戦慄の実態が白日の下に

AI Topica 編集部