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中国系攻撃者がAIで侵入自動化、ConnectWise経由2250組織に不正サインイン

取引先のクラウドサービスを信用して権限を与えているだけで、気づかぬうちに侵入経路になる時代になりました。今回Microsoftが警告した事例は、AIエージェントが人手を介さずに偵察から侵入までを自動でこなし、短時間で多数の組織に広がった実態を示しています。自社がConnectWiseのサービスを使っていなくても、取引先経由で影響が及ぶ可能性がある点は押さえておく必要があります。

何が起きたか

米Microsoftは10月21日(現地時間)、中国国家と連携する攻撃者「Storm-0940」が、AIエージェントを使った侵入テストフレームワーク「ARTEX」で攻撃を自動化し、世界の数百の組織を標的にしていると発表しました。同社は、10月中旬に明らかになった米ConnectWiseのクラウドバックアップサービスを経由したサプライチェーン攻撃についても、Storm-0940によるものと分析しています。

攻撃者はConnectWiseのアプリの認証情報を奪い、これらのアプリに顧客のMicrosoft 365環境で付与されていたアクセス権限を悪用しました。正規アプリになりすますことで、利用者がサインインしなくても顧客環境に入り込める点がポイントです。Microsoftによると、2250以上の組織のテナントに対して毎分2900回のペースでサインインが試みられ、一部の環境では情報収集やアプリへの認証情報追加、管理者権限の付与などが実行されていました。標的を選んでから組織のクラウド環境で管理者級の権限を得るまで3時間かからなかった事例も複数あったといいます。

なお、GMOサイバーセキュリティ byイエラエも10月19日、日本企業を狙った不正アクセスでARTEXの悪用を確認したと発表しています。同社が観測した攻撃元は日本企業約20社を標的にしており、うち8社は9~10月に情報漏えいを公表していたとのことです。

背景・解説

侵入テストツールとは、本来は企業が自社システムの弱点を事前に洗い出すために使う、擬似的な攻撃を仕掛けるソフトウェアです。今回の「ARTEX」はオープンソースの侵入テストツールで、任意のAIモデルと組み合わせることで、偵察からデータの持ち出しまでを人間がほとんど関与せずに自動で実行できる設計になっています。表示言語も英語に加え日本語・韓国語・中国語・スペイン語に切り替えられるため、攻撃対象を問わず使い回しやすいツールです。

攻撃グループ「Storm-0940」は2021年から活動しており、データ窃取を目的に航空宇宙・防衛、自動車、金融、政府、半導体など幅広い業種を狙ってきました。9月ごろからARTEXを使い始め、攻撃の対象をさらに広げています。Microsoftは、AIエージェントが人間と違って昼夜や休日を問わず動き続け、複数の侵入経路を同時に試せるため、標的を選んでから目的を達成するまでの時間が大幅に短くなっている点を指摘しています。なお、Microsoftは自社のシステムや製品の脆弱性が悪用されたわけではないとしています。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

自社が直接ConnectWiseのサービスを使っていなくても、取引先や委託先が使っていれば影響を受ける可能性がある点を、経営層と情報システム担当は共通認識として持つべきです。例えば、従業員200人規模の製造業で、バックアップ業務を外部のクラウドサービスに委託している会社であれば、委託先のアプリに付与している権限の範囲をいま一度棚卸しする必要があります。権限が「読み取りのみ」なのか「管理者相当」なのかで、侵入された際の被害規模は大きく変わります。

AIエージェントによる自動攻撃は、標的を選んでから3時間以内に管理者権限を奪われた事例が複数あったという点が実務上のインパクトです。人間の攻撃者なら数日かかる偵察と侵入の工程が、休日や深夜を問わず数時間で完了してしまうため、月次や週次の監視では間に合いません。経理担当や情シス担当が1人しかいない中小企業であっても、外部アプリへの権限付与は最小限にとどめ、強い権限を持つアプリの認証情報追加や権限変更は自動アラートで検知できる仕組みを導入するべきです。

ログ確認の作業自体は目新しいものではありませんが、今回のように毎分2900回規模のサインインが試みられる攻撃では、人手での定期チェックだけでは発見が遅れます。10月以降にConnectWiseのバックアップ関連アプリを使っていた、あるいは過去に使っていた組織は、サインイン記録と監査ログを早急に確認するべきです。身に覚えのない認証情報の追加や権限変更が見つかった場合は、権限の取り消しと認証情報の更新を速やかに行う必要があります。

不確かな点・注意

Microsoftは、侵入の痕跡があっても必ずしもデータが閲覧・持ち出されたことを意味するわけではないとしており、被害の実態は現時点で確定していません。また、ARTEXを使う攻撃者は複数の地域にいるとされており、GMOサイバーセキュリティ byイエラエが報告した日本企業約20社への攻撃とStorm-0940との関係については、Microsoftは言及していないとのことです。

ConnectWiseからの正式な復旧手順はまだ示されておらず、Microsoftは影響を受けたアプリの接続を無効のまま維持し、調査証拠の喪失を防ぐためアプリ自体を削除しないよう求めています。確認すべきログの対象期間は少なくとも10月15日以降、可能であれば10月1日以降とされていますが、具体的な被害件数や影響を受けた日本企業の有無については、現時点で公表されている情報からは分かりません。

出典

  1. 中国系攻撃者がAIエージェントで攻撃を自動化、「ConnectWise」のサプライチェーン攻撃に関与 Microsoftが警告

AI Topica 編集部