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解説

「AI TRiSM」「AIランタイム・ディフェンス」とは何か AI時代のセキュリティ新概念を読み解く

AIエージェントを業務に取り入れる企業が増える一方で、それを守る側のセキュリティ用語は専門的で分かりにくくなっています。ガートナーが示した新しい技術リストを手がかりに、今どの用語を押さえておくべきかを整理します。

何が起きたか

ガートナージャパンは10月7日、「日本におけるセキュリティ(AI時代のサイバーセキュリティ)のハイプ・サイクル」を発表しました。セキュリティ領域で2026年に新たに追加されたもので、AIエージェントの急拡大とフロンティアAIによる脅威に備えるための新たなテクノロジーや手法、概念を取り上げています。

このハイプ・サイクルでは「AI TRiSM」「AIランタイム・ディフェンス」「AIガバナンス」「サイバーセキュリティAIアシスタント」の4項目が、「過度な期待」のピーク期に位置づけられました。

ガートナーは、企業がAI時代のサイバーセキュリティを議論する際には「Security for AI(AIのためのセキュリティ)」と「AI for Security(セキュリティのためのAI)」という2つの観点を持つ必要があるとしています。

背景・解説

ハイプ・サイクルは、新しい技術や概念に対する期待の高まりと落ち着きの推移を段階的に示す手法です。今回ガートナーは「AI時代のサイバーセキュリティ」という領域そのものを2026年版で新規に設け、まだ耳慣れない用語が並ぶ背景を整理しています。

1つ目の観点「Security for AI」は、AIそのものを守る側の取り組みです。従業員による生成AIやAIエージェントの利用が急速に広がる中、マシンアイデンティティー管理の不備や、AIを狙ったインジェクション、ポイズニングといった新たな攻撃手法への備えが急務になっています。これに対応する技術として、AIエージェントガバナンス、AIセキュリティテスト、そして「AIランタイム・ディフェンス」への関心が徐々に高まっているといいます。

もう1つの観点「AI for Security」は、AIを使ってセキュリティ運用そのものを支える取り組みです。これまで難しかった運用の高度化や効率化が、AIの性能向上によって現実味を帯びてきました。外部委託への依存を減らし、運用のナレッジを社内に蓄積する動きにも関心が集まっています。あわせて、AI SOCエージェントや自律的エクスポージャー修復(AER)のような自動化技術も、現場担当者の関心を集め始めているとのことです。

ガートナーは、フロンティアAIがもたらす新たな脅威が、既存のセキュリティ運用手法に大きな変化をもたらすと見込んでいます。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

AIエージェントの導入を進める企業ほど、今回挙げられた用語の基礎知識を先に押さえておくべきです。例えば、従業員300人規模の物流会社で情シス担当が2人しかいない場合、業務効率化のために複数のAIエージェントを導入する計画があるなら、導入前にマシンアイデンティティー管理とAIセキュリティテストの考え方だけでも把握しておく必要があります。担当者が2人しかいない体制でゼロから自社開発するのは現実的ではなく、まずは4つの用語の意味を理解し、ベンダーへの質問リストに加える程度で十分です。

一方、AI for Securityの動きは、セキュリティ運用の外部委託を見直す材料になります。年間のセキュリティ監視委託費が数百万円規模の中堅企業なら、AI SOCエージェントのような自動化技術の実用化状況を定期的に確認し、委託内容を見直すタイミングを計るべきです。すべての企業がすぐに自動化技術を導入する必要はありません。矢野薫氏が指摘する通り、多くの技術は成熟までに時間がかかるため、まずは試験的な利用から始めれば十分です。

不確かな点・注意

今回のハイプ・サイクルで挙げられた4項目は、いずれも「過度な期待」のピーク期にある段階で、実用段階に達した技術として紹介されたわけではありません。ガートナーのシニア ディレクター アナリストである矢野薫氏も、取り上げた技術の多くが成熟するまでにはまだ時間がかかるとの見方を示しています。

各技術がどの程度の期間で普及期に入るか、具体的な年数や目標時期は示されていません。「AI TRiSM」や「AIランタイム・ディフェンス」といった用語の技術仕様についても、発表内容では詳細な定義までは説明されていない点に注意が必要です。導入を検討する際は、ベンダーごとに言葉の使い方が異なる可能性があるため、個別に確認する作業が欠かせません。

出典

  1. ガートナー、日本におけるAI時代のサイバーセキュリティのハイプ・サイクル2026年版を発表

AI Topica 編集部