解説
セミナー・イベント企画のAI活用、3割が導入する内実と限界
セミナーやウェビナーの企画を任されている担当者にとって、テーマ決めや告知文作成は時間を取られがちな業務です。AIをどこまで使えるのか、どこからは人の判断が必要なのかを知っておくと、準備の進め方が変わります。
何が起きたか
株式会社BOTANICOが、既存クライアント40社を対象に「AIを活用したセミナー・イベント設計に関するアンケート調査」を実施しました。調査期間は2026年10月15日で、調査対象は同社の既存クライアント40社、有効回答数は40件です。
調査の結果、回答企業の30%にあたる12社が、AIを活用してセミナーやイベントの企画・設計を行っていることについて「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答しました。残りの70%(28社)はそれ以外の回答でした。調査対象はセミナー、ウェビナー、展示会、地域イベントなどにおけるAI活用状況です。
BOTANICOはこの結果について、文章作成や資料制作だけでなく、イベントの企画・設計段階にもAIを活用する企業が一部で見られると説明しています。一方で、調査はAI活用の有無を集計したものであり、具体的な利用頻度や作業時間の削減効果、イベントの集客成果については個別に測定していません。
背景・解説
「AIを活用したセミナー・イベント設計」とは、イベントの企画立案、プログラム構成、告知文作成、集客導線の検討、運営資料作成など、イベント設計に関わる業務の一部または全体をAIで補助的に進めることを指します。BOTANICOの調査も、この定義に沿ってAI活用の有無を確認したものです。
セミナーやイベントの企画には、ターゲット設定、テーマ選定、プログラム構成、集客方法の検討、告知文章の作成など多くの工程が必要です。さらに運営に入ると、進行台本作成、参加者案内、よくある質問への回答案作成、アンケート集計、結果レポート作成といった業務も発生します。BOTANICOはこうした一連の工程で、テーマのマンネリ化、告知文作成に時間がかかること、集客導線を構築できていないこと、参加者対応の負担、効果測定の不十分さなどを課題として挙げました。
AIが支援できる範囲として示されているのは、企画段階のテーマ選定やターゲット整理、プログラム構成案の作成に加え、SNS投稿企画や広告文作成、LPの構成案作成といった集客段階の業務、さらに運営マニュアルや進行台本、アンケート結果の整理といった開催後の業務まで幅広く及びます。これらはいずれも情報整理や文章のたたき台作成が中心で、AIが企画案や文案の初稿を複数パターン用意し、人が選んで調整するという使い方です。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
セミナー運営の担当者が1人しかいない中小企業ほど、AIで企画の下準備を効率化する効果は大きくなります。例えば、従業員30人規模の製造業で広報担当を兼務するスタッフが1人だけいる会社なら、年数回のセミナー開催のたびにテーマ決めから告知文作成、アンケート集計までを1人でこなす必要があり、AIにタイトル案やプログラム構成案、リマインドメール文面の作成を任せることで、準備にかかる作業時間の一部を圧縮できます。
ただし、BOTANICOの調査が示すのは「企画・設計にAIを使っている企業の割合」であり、「AIを使った企業ほど集客や満足度が上がった」という結果ではありません。参加率や商談化率を高めたい企業は、AIで作った企画案をそのまま使うのではなく、登壇者の専門性や参加者の課題感を踏まえて人が内容を調整するという工程を必ず挟むべきです。
社内でAI活用を広げたい企業は、まず告知文作成やアンケート集計といった定型的な工程からAIに任せ、テーマ選定や登壇内容の調整といった参加者理解が必要な工程は担当者が判断する、という役割分担を決めておくだけで十分です。企画の全工程を一気にAIに置き換える必要はありません。
不確かな点・注意
今回の調査はBOTANICOの既存クライアント40社を対象にしたもので、国内企業全体の傾向を示すものではありません。回答企業の業種や規模、開催しているイベントの種類についても、公表された内容からは判断できない状況です。
また、AI活用の有無を聞いた調査であり、実際の利用頻度や作業時間の削減効果、イベントの申込者数・参加者数・売上などへの影響は測定されていません。「AIを活用している」と回答した企業が、どの工程をどの程度AIに任せているかも明らかにされていないのが実情です。
参加者情報やアンケート結果をAIで処理する場合には、個人情報や機密情報の取り扱いに注意が必要だとBOTANICOは指摘しています。AI活用を検討する企業は、この点を社内ルールとして事前に確認しておく必要があります。