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AI投資「7割増」でもコスト一元管理は3割未満、大企業調査が示すギャップ

AI投資をさらに増やすと答えた大企業は7割に達しました。ただし、そのコストを全社で一元的に把握できている企業は3割に届いていません。予算を増やす判断をする前に、自社の管理体制がどの段階にあるかを確認しておく必要があります。

何が起きたか

サイボウズは、従業員数1,000名以上の企業551社(情報通信業を除く)の経営層およびIT・DX部門に所属する人を対象に実施した「大企業におけるAI活用実態調査」の第2弾を公開しました。テーマは「コスト・ガバナンス・データ活用」です。

今後3年間のAI投資の方針を尋ねたところ、「大幅に増加させる予定」が23%、「やや増加させる予定」が47%で、合計70%がAI投資を増やすと回答しました。一方「現状維持」は28%、「縮小見込み」は1%にとどまっています。

ところが、AIツール・AIエージェントにかかるコストの把握・管理状況については、「部門・プロジェクト単位では把握できているが全社での把握はできていない」が32%で最多となり、全社で一元的に把握できている企業は29%にとどまりました。今後のコスト増大への備えについても、「対応を検討・準備中」が44%と最も多く、「予算計画・管理の仕組みをすでに整えている」企業は14%にとどまっています。

一方でAIガバナンスについては、「策定済み・現在運用中」と答えた企業が51%と半数を超えました。社内業務データのAI活用状況は「積極的に活用できている」12%、「一部の業務データを活用できている」45%を合わせて57%が何らかの形で活用できていると回答しています。ただし業務データの蓄積状況は「共有可能な形で一部蓄積されるが、Excelや個人PCにも多く蓄積」が55%と最多で、主要な業務システムとAIを連携させている企業は11%にとどまりました。

背景・解説

ここでいう「AIコストの一元管理」とは、部門やプロジェクトごとにバラバラに契約・利用されているAIツールやAIエージェントの費用を、全社横断で一つの仕組みから把握できる状態を指します。調査では、部門単位の把握はできていても全社での把握ができていない企業が32%と最も多く、全社一元管理ができている企業(29%)をわずかに上回っています。

「AIガバナンス」は、AIの利用ルールや承認プロセス、リスク管理の体制を指す言葉です。調査ではこちらが51%の企業で「策定済み・現在運用中」とされ、コスト管理よりも整備が進んでいる結果です。

また、業務データの活用についても二面性が見られます。社内業務データを何らかの形でAIに活用できている企業は57%にのぼる一方、データ自体はExcelや個人PCにも多く残っている企業が55%を占めました。業務システムとAIを連携させている企業はまだ少数派で、「主要な業務システムと連携」と答えた企業は11%にとどまっています。AI活用の予算については「IT予算・DX予算の一部」として扱われている企業が53%で最も多く、AI専用の予算枠を持つ企業は20%にとどまっています。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

投資額だけを増やしても、使った分を把握する仕組みがなければ、AI活用は「かけ声倒れ」になります。例えば、従業員3,000人規模の製造業で、部門ごとに別々のAIツールを契約しているとします。各部門の担当者は自分の契約しているツールの料金は把握できても、全社でいくら使っているかを答えられる人は社内に一人もいない、という状況が十分に起こり得ます。調査でも全社一元管理ができている企業は29%にとどまり、7割以上がこの状態に近いとみてよい数字です。

まず着手すべきは、コストの可視化よりもガバナンスの整備です。ガバナンスはすでに51%の企業で運用段階に入っており、コスト管理よりも先行しています。例えば、IT部門の担当者が1人しかいない従業員1,500人規模の商社なら、まずは利用ルールと承認フローを文書化し、そのうえで各部署のAI利用料金を月次で報告させる仕組みを作るだけで、全社把握への第一歩になります。予算が「IT予算・DX予算の一部」として扱われている企業が53%を占める現状では、専用の予算枠を作るよりも、既存のIT予算の報告ルールにAI費用の項目を一行追加することの方が現実的です。

データ活用についても、整備の順番を間違えないことが重要です。社内データを何らかの形でAIに活用できている企業は57%ありますが、データの55%はExcelや個人PCにも残ったままです。例えば、営業部員30人の会社が顧客対応の議事録をAIで要約し始めたとしても、元データが各担当者のパソコンに散在していれば、全社的な活用にはつながりません。業務システムとAIを連携させている企業はまだ11%で、ここまで到達できている会社はごく一部です。投資額を増やす判断の前に、自社がコスト管理・ガバナンス・データ連携のどの段階にあるかを一度棚卸しすべきです。

不確かな点・注意

今回の調査は、従業員数1,000人以上で情報通信業を除く企業551社を対象にしたインターネット調査であり、調査時期は2026年7月6日から9日です。中小企業や情報通信業の実態は含まれていない点に注意が必要です。

また、数字はあくまで回答企業の自己申告に基づくものです。「ガバナンスを策定済み・運用中」と答えた企業であっても、その運用の厳格さや実効性の水準までは調査からは分かりません。コスト管理やデータ連携についても、回答企業ごとに「一元管理」「活用できている」の基準にばらつきがある可能性があります。業種・規模によって課題の優先順位は異なるため、自社の状況と照らし合わせたうえで判断材料とすることが求められます。

出典

  1. サイボウズ「大企業におけるAI活用実態調査」第2弾を公開 ー AI投資を「増加させる」企業は7割に達するも、AIコストを一元管理している企業は3割未満

AI Topica 編集部