仕事への影響
AI利用料の4人に1人が個人負担、経理・情シスのコスト管理はどう変わるべきか
部門や個人の判断でAIツールを契約する動きが広がる一方、その費用を誰がどう管理するかは置き去りになりがちです。経理や情シスの担当者にとって、この「見えないAI支出」はすでに他人事ではありません。
何が起きたか
マネーフォワードは10月21日、「企業のAI利用・支出管理に関する実態調査」の結果を発表しました。AIツールの導入・契約・予算・支払い・管理に関わる担当者520人を対象に、9月25日から28日にかけてインターネットアンケートを実施したものです[1][2]。
調査によると、勤務先でのAIツール利用状況は「部門単位で利用」が49.8%、「個人・チームの判断で利用」が27.1%で、合わせて76.9%が現場主導の利用でした。全社で共通利用しているとの回答は21.9%にとどまっています[1]。
支払い手段は、会社共通の法人カード(32.5%)やクラウド・ライセンス費用への合算(32.1%)など組織的な支払いが多い一方、「従業員の個人カードによる支払い」が25.6%、会社で精算しない「従業員の個人負担」が25.4%と、4人に1人以上が自腹を切っている実態も明らかになりました[1][2]。
AI利用コストの把握・管理について「大きな課題」「やや課題」と答えた割合は合わせて77.5%に達しています。課題の内訳では「同じ用途のツールを重複して契約している」が26.3%で最多となり、「部門・利用者ごとに費用を割り振れない」「利用量の急増や予算超過に気付けない」などが続きました[1][2]。
背景・解説
AIコスト管理とは、企業内でどのAIツールにどれだけの費用がかかっているかを把握し、契約や支払いを一元的にコントロールする取り組みを指します。かつてのITコスト管理は情シス部門が社内のソフトウェア契約を集中管理する形が主流でしたが、AIツールは個人やチームの判断で手軽に契約できるものが多く、この前提が崩れつつあります。
今回の調査で現場主導の利用が76.9%に達した背景には、無料プランや低額プランから試せるAIサービスが増え、稟議や情シスの審査を経ずに導入できる環境が整ったことがあります。その結果、費用の支出元も情報システム・IT部門(32.1%)、DX推進部門(30.6%)、会社全体の共通予算(29.0%)、現場部門(28.5%)に分かれ、どの部門が主管かを一元的に答えられない状態が生まれています[1][2]。
マネーフォワードはこの状況について、属人的な管理から脱却し、誰がどのツールにどれだけのコストを使っているかを可視化・一元管理する仕組みづくりが急務だと指摘しています[2]。
仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方
経理・情シス部門は、AIツールの「契約を止める」役割から「支出を見える化する」役割へと仕事の軸を移すべきです。現場主導の導入自体を禁止しようとしても、低価格で始められるAIツールの広がりを考えれば実効性は乏しくなります。むしろ、どの部署がどのツールにいくら払っているかを月次で棚卸しする仕組みを持つ部門の方が、予算超過への対応は早くなります。
例えば、従業員80人ほどのIT受託企業で経理担当が2人という体制なら、各部署からの領収書や個人立て替えの精算申請を月末にまとめて確認するだけでは、調査にあった「同じ用途のツールを重複して契約している」状態を見逃します。四半期に1度、契約中のAIツールと利用部署をリスト化し、法人カード明細・個人立て替え申請・請求書払いの3系統を横断で突き合わせる作業を担当者1人がルーティン化するだけで、重複契約や退職者の契約残存に気付く機会が増えます。
情シス部門にとっても変化は小さくありません。これまでのソフトウェア資産管理は年1回の棚卸しで十分でしたが、AIツールは契約から解約までのサイクルが短く、月単位での利用状況確認が必要になります。従業員300人規模の製造業で情シス担当が3人という会社であれば、各部門のAI利用申請を四半期ごとに集計するのではなく、月次でダッシュボードを確認する運用に切り替えるべきです。
個人負担・個人カードでの立て替えが25%を超えている点も見逃せません。経費精算の仕組みにAIツール利用分の申請項目を明示的に設けるだけで、これまで可視化されていなかった支出の実態がつかめるようになります。小さな運用変更ですが、効果は確実に出ます。
不確かな点・注意
今回の調査はマネーフォワードが自社で実施したもので、回答者はAIツールの導入・契約・予算・支払い・管理に関与する担当者520人に限られています。企業規模や業種の内訳、回答者の役職については出典に記載がなく、調査結果が日本企業全体の傾向をそのまま示すものかどうかは判断できません[1][2]。
また、調査は2026年9月25日から28日の4日間に実施されたものであり、回答は各担当者の認識に基づく自己申告です。実際の契約件数や支出額と照合した結果ではない点にも注意が必要です[2]。
なお、マネーフォワードは自社製品であるAIトークン管理やビジネスカードの提供を通じてAIコストマネジメントを支援するとしており、調査結果の分析にはこうした自社サービスの訴求という側面が含まれる可能性がある点も留意すべきです[2]。