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仕事への影響

AIが税務判断を代行、サントリーGが会計伝票を全件精査

経理人材の採用が難しくなる中、AIが税務判断の一次チェックを担う動きは他人事ではありません。サントリーグループの導入事例は、その現実味を示す材料になります。

何が起きたか

ファーストアカウンティングは9月10日、AIが税務や社内規程に基づいて経理判断を下す新製品「Steward・税務確認」の提供を開始しました[1]。従来のAI-OCRが担ってきた「データ入力・照合」の自動化から一歩進み、税務・会計ルールの確認と判断という領域にAIを適用する製品です[1]。

同社代表取締役社長の森啓太郎氏は、簿記実務検定試験の受験者数がピーク時の86万2000人から2024年には16万9000人へと約80%減少し、日商簿記2級の実受験者数も2010年比で約28%減少していると説明しています[1]。2024年には大学入学共通テストから「簿記・会計」が廃止されたことにも触れ、経理人材の確保が一段と難しくなる状況だと述べました[1]。

Steward・税務確認は、消費税や接待交際費、寄付金、固定資産・期間損益といった論点について、人によるサンプリング確認ではなくAIによる全件一次チェックを実施します[1]。追加確認が必要な案件を抽出し、現場への問い合わせメールの下書き作成まで支援する仕組みです[1]。

導入第一号となったのがサントリーグループの経理・総務・人事を担うサントリービジネスシステムで、国内9社から月間約1万5000件発生する会計伝票を対象に、5月から段階的に運用を始めています[1]。同社独自の消費税ルールや接待交際費ルールなどをAIに読み込ませ、社内規程に沿った全件モニタリングを実現したといいます[1]。

背景・解説

経理部門ではこれまでも、請求書や領収書の文字情報を読み取るAI-OCRの導入が進んできました[1]。ただし読み取った後の税務判断や会計処理の妥当性確認は、担当者の経験や知識に頼る部分が大きく残っていました[1]。

一橋大学財務リーダーシップ・プログラムの調査では、企業の86%が経理部門の人材採用に「一定の課題」または「大きな課題」を抱えていると示されています[1]。制度改正や税務行政の高度化で業務水準は上がる一方、簿記を学ぶ機会は減っており、経理実務を担う人材の供給ルートは細くなっています[1]。

Steward・税務確認は、簿記や会計知識を含む共通モジュール(全体の80%)と、個社独自のルール(全体の20%)を組み合わせて構築するモジュール型の開発手法を採用しています[1]。この構成により、AIにありがちな「判断ゆれ」を抑えつつ、通常のシステム開発より低コスト・短納期での実装を目指しているといいます[1]。

仕事や業務への影響 — AI Topicaの見方

経理担当者が2〜3人しかいない中小企業ほど、税務判断へのAI活用が業務の支えになります。

例えば、従業員80人ほどの製造業で経理担当が2人という会社を想定すると、消費税や接待交際費の判断を毎月数百件分、人手でサンプリング確認する余裕はまずありません。全件を一次チェックするAIを導入できれば、担当者は抽出された例外案件の確認だけに時間を割けます。

サントリービジネスシステムの事例が示すのは、月間1万5000件規模の会計伝票でも、社内規程をAIに組み込めば全件モニタリングが実現できるという事実です。これは大企業に限った話ではありません。取引件数が少ない中小企業なら、同種の仕組みをより低いコストで試せる余地があります。

経理人材の採用難は今後も続く前提で経営を組み立てるべきです。日商簿記の受験者減少や共通テストからの科目廃止という事実は、簿記の素養を持つ新卒人材が減り続けることを示しています。採用だけで人手不足を解決しようとする発想は、遅かれ早かれ行き詰まります。

一方で、AIに任せれば経理担当者そのものが不要になるわけではありません。Steward・税務確認も「追加確認が必要な案件の抽出」までを担う設計で、最終判断や現場とのやり取りには人の関与が残ります。経理担当者の役割は、入力や照合作業から、AIが抽出した例外案件の判断や社内調整へと変わります。

管理職が今すぐ着手すべきは、自社の会計・税務ルールを言語化する作業です。社内規程が属人化したままでは、AIに読み込ませる元データ自体が整わず、どの税務AIを選んでも効果は限定的になります。

不確かな点・注意

Steward・税務確認の判断精度や誤り率について、公開されているデータは示されていません[1]。導入にかかる費用や具体的な期間も明らかにされていないため、他社が同様の効果を得られるかどうかは今回の内容だけでは判断できません。

森氏は簿記2級・3級で正答率100%、1級で99%という数値や、公認会計士試験の一部科目をクリアする水準にあると述べていますが、これらは同社側の説明であり、第三者による検証結果ではない点に注意が必要です[1]。

ファーストアカウンティングは今後、起票業務や入金消込、債権管理、決算集計などへ適用範囲を広げる方針を示していますが、実際の提供時期や対象範囲は明らかにされていません[1]。税務判断という重い領域をAIに委ねる以上、最終的な責任の所在や監査対応の扱いについても、各企業側での確認が求められます。

出典

  1. ファーストアカウンティング、AIが税務を「判断」する新製品--サントリーGで全件AI精査を開始

AI Topica 編集部